【スクープ】東京都心で高齢者の「連れ去り」が起きている!なぜ肺がんの治療さえ受けさせないのか「これは港区による虐待です」
本人も家族も望んでいないのに、自治体が勝手に「認知症が進んだ」「虐待から守る」などとして高齢の肉親を親族から引き離し、長期間、面談さえ許さないケースが全国で多発している。
その間に行政権限で高齢者に成年後見人が付き、家族の同意がないまま財産が処分されたケースも少なくない。当の高齢者は、やはり自治体の判断によって医療保護入院させられて精神科病院などから出られなくなり、親族との連絡が遮断されるのだ。被害に遭った当事者や親族は「突然、親と連絡が取れなくなった」「自治体による高齢者の誘拐ではないか」と憤る。
行政によって高齢者が連れ去られる――。
そんな出来事を追って日本各地を歩くと、水面下で進むおぞましい実態が次から次へと見えてきた。面会禁止が何年も続き、「もう死ぬまで親に会えないのか」と絶望する人も数多い。これはいったい、どういうことか。「高齢者“連れ去り”」の実態を追うシリーズの初回、舞台は東京都港区。東京23区の中でも高額所得者が多く、“勝ち組”が多いとされるエリアで起きたケースを報告する。
フロントラインプレス
口げんかをしただけなのに…
「口ゲンカなんか、しなきゃよかった」
東京都港区に住む30代の斉藤裕子さん(仮名)は、今でも後悔の念にかられている。
運命が変わったのは2022年9月22日だった。この日、一緒に住んでいた80代の母とささいなことで口論になった。つかみ合いになったわけでも、どちらかが手を上げたわけでもない。ただ、母はもともと統合失調症を患っていたことがあり、自宅を飛び出すとそのまま警察に駆け込んでしまった。おそらく、興奮したことで統合失調症特有の妄想の症状が出て、警察に助けを求めに行ったと思われる。
裕子さんは言う。
「警察に行った後で港区役所に連絡が行って、母は区内のデイケアサービスの施設に一時的に保護されたようです。翌23日に電話があって、『携帯電話の充電器と着替えを持ってきてほしい』とお願いされました」
母からの連絡を受けた裕子さんは、施設に充電器や着替えを届ける手配をした。ところが3日後の25日になると、ぱったりと連絡が取れなくなった。携帯電話の電池が切れたのか、電話をかけても呼び出し音すらしない。
「何があったのか」と思ってデイケアサービスに電話をすると、職員から想像もしなかったことを告げられた。
「電話をおつなぎすることはできません」
「港区の指示により、お母さんと電話をおつなぎすることはできません」
なぜ、そんな指示が港区から出ているのか。呆気にとられた裕子さんは、今度は港区に電話した。担当は港区赤坂地区総合支所の区民課保健福祉係。電話に出た職員は「いま、お母様は安全な場所にいますから、あなたは少し離れていてほしい」としか言わない。不信を募らせた裕子さんは「電話で話もできないのはおかしいでしょう?」と食い下がった。すると、職員はこう言ったのだという。
裕子さん、あなたがお母様を虐待しているとわれわれ行政は判断しました。そのため、あなたは「中長期的に会えないんです」と。
虐待? 私が? まったく心当たりがない。その後、裕子さんは何度も説明を求めた。
港区によると、母の薬指に打撲の痕があったという。それが虐待の証拠と見られたらしい。しかし、あの痕は何年も前のオーストラリア旅行でケガをした際のもの。「すねにアザがあった」とも言われたが、それは母がお風呂に入った時に尻餅をついてぶつけてできたものだ。そう説明しても港区の職員は、裕子さんの言い分を聞かない。そして、面会禁止を告げた。何度も「直接、母と話をさせてほしい」と申し出ても、港区の対応は変わらない。
高齢者虐待防止法は、養護者によって高齢者が虐待され、生命や身体に重大な危険が生じている恐れがある場合、高齢者を一時的に施設で保護する権限を市区町村長に与えている。これを「分離保護」という。裕子さん母娘にも適用され、統合失調症を患ったことのある母は精神科病院に入院させられたのだ。
成年後見人の不手際で家族の思い出の品が廃棄
裕子さんをさらに追い詰めたのが、連れ去りから約7カ月後、2023年4月の出来事だ。母に成年後見人がついたのである。