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「大臣時代に政策への横槍が入った」…ディープステートの『陰謀論』にハマる政治家たちへのインタビュー

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「それって陰謀論じゃないですか?」闇の国家「ディープステート」を信じる著名人一人一人に会ってみたら…どうなった?

ネットに横行する「陰謀論」にハマっている人の中には、普段情報には多く接しているはずの政治家や学者などもいます。陰謀論の中でもポピュラーな、「裏の政府」ともいえる謎の組織がアメリカを支配しているという「ディープステート」論を信じる日本の政治家たちを取材したのが、共同通信のこの記事です。

陰謀論にハマっている人はいわゆる情弱だと決めつけてしまったり、あるいはネット上の存在だと考えていると、なかなか彼らの心情まではつかめません。その対策もできません。そこで、きちんと会って話しを聞きに行くというのは、きわめてオーソドックな方法ですが、陰謀論自体を荒唐無稽に感じ、意外とそうした取材は多くありません。

そこで、この記事で陰謀論を語る政治家たちの言い分には、とても興味がわきました。

その代表は、立憲民主党の衆院議員でかつては総務相までつとめた原口一博さんです。原口さんは日頃から自身のX(タイトル画像参照)やYotubeなどで、DS(ディープステイト)について発信を繰り返しています。

今回のインタビューでも、ディープステートについて、
 「その存在を認識するようになったのは2002年のこと。日米地位協定の改定案を議論していたら、米中央情報局(CIA)の日本担当を名乗る人物から、内容が好ましくないと言われた」
と持論をぶちあげます。

さらに、驚くことに、「詳しいことは言えないが、総務相時代も何度か政策への横やりが入った」と総務大臣時代のことと振り返っています。

この記事は原口さん以外にも、陰謀論にはまる地方政治家などにインタビューをしており、彼らが独特の考え方を固く信じこんでいることがよく理解できます。政治家のように高度な情報に日頃接する人や社会的地位が高い人でも、陰謀論にハマる人がいるという実態がよくわかります。

一方で惜しいのは、ボリュームが限られてるためなのか、インタビュー自体は短い記述であり、周辺の取材も紹介されていないので、なぜ彼らが陰謀論にハマったのか、なぜそれから離れることができないのか、というところは伝わってきません。そこは残念です。

原口さん自身は、このときの共同通信記者とのやりとりをYoutubeで公開しています。

こちらを見ると、原口さんが反ユダヤやQアノンなどには距離をおく冷静さをもっている一方で、彼が陰謀論を信じる土壌になったアメリカ体験や、新型コロナにおける「反ワクチン」と陰謀論が密接な関係があることがわかります。

こうした陰謀論者に直接話しを聞く手法では、在日コリアンへの誹謗中傷を繰り返す団体のリーダーたちに取材を重ねた安田浩一さんの傑作ノンフィクション『ネットと愛国』が知られています。

安田さんは当事者のインタビューとともに、その周辺を取材することで、彼らの素顔や背景とともに、彼らが民族差別にはしる構造まで丁寧に浮き彫りにしました。

今回のディープステート論者へのインタビューを入口に、本人、周辺取材なども重ねて、さらにその構造にまで踏み込んだ記事を読んでみたいという期待をいただく記事でした(瀬)