
ジャニーズ「調査報告書」が厳しく指摘するメディアの責任にどう応えるか
あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。
きょうはこちら。
ジャニーズ事務所 調査報告書(公表版)
さまざまな報道がありますが、「原典」にあたっておくことは大事です。
ジャニーズ事務所の性加害問題、同社がつくった「外部専門家による再発防止特別チーム」による調査報告書が8月29日に公開されました。
当初はお手盛りになるんではないか、という懸念も報じられましたが、実際には、精緻に検証し、事務所の経営体制の刷新にまで踏み込んだ内容となりました。下記のリンクより、読むことができます。

1960年代の事務所創業時から性加害が続いていたこと、無防備な少年たちを襲う悪辣な手口、「性加害を受け入れると仕事もくれるんだ。上り詰めていくには積極的にジャニー氏を受け入れないといけないんだ。」と洗脳されていったこと、被害を訴えても事務所が「我慢すればいい夢が見られる。みんな通っていく道だ」ととりあわなかったこと、そして被害者がいまも苦しむ後遺症など、あまりの生々しさに読むほうも目をそむけたくなる実情が詳細に書かれています。
一方で、この犯罪が放置されてきたのは、「メディアの沈黙」も理由だという指摘も目を引きます。タレントの出演などで取引がある放送局や出版社は、事件を知りながら、恣意的に報道をしてこなかった、矮小化してきたのではないか、と厳しく指弾しています。
この報告書を受けて、テレビ各局はコメントを出しました。下のリンクにある朝日新聞の記事から各社のコメントを読むことができます。それぞれ「厳しく受け止める」としながらも、なぜ報道がされなかったのか、今後どう改善していくのかについて、具体的に触れている会社はありません。
報道が忖度をしていたのではないか、というジャーナリズムの根幹にまつわる問題です。ジャニーズだけではなく、ほかの芸能事務所、クライアント、あるいは政治や行政との関係でも起こる懸念があります。
今回、なぜ報道が不自然だったのか、同じ間違いをどうすれば防げるのか、「沈黙」と指摘されたメディアから具体的なアクションが生まれてくることを期待したいです。(瀬)
(外部専門家による再発防止特別チーム 2023/8/29)
(朝日新聞 2023/8/30)