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「チャイルド・デス・レビュー」小さな命を救うための挑戦 調査報道の大型連載をスタートします

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あり得ない光景だった。
目にしたのは、路上の真ん中に止まったダンプカー。そして、道路脇で血を流して横たわる子ども。
「誰の子? 誰の子?」という母親の大声が、「ああ、うちの子やあ!」という絶叫に変わるのに時間はかからなかった――。

まさか、わが子の命が失われるとは。世界一安全と言われる日本で、繰り返される子どもの事故や虐待、自殺…。突然やってくる悲劇、しかし死因さえはっきりしないケースも少なくない。
「命を救えなかった理由は何か」「今からでも何かできることはないか」。いま、日本でも「命を救う新たな戦い」が始まった。

高田昌幸氏が率いるフロントラインプレスの最新連載は、その現在地を伝える調査報道シリーズだ。

チャイルド・デス・レビューとは何か

Child Death Review=チャイルド・デス・レビュー。

それは子どもの死因を分析し、予防につなげる取り組みだ。まだ一般にはあまり知られていないが、日本でも厚生労働省が本格導入を目指し、昨年度から7府県でモデル事業が始まっている。

原則、全ての子どもの死を調査対象とし、子どもの死亡を減らすことが目的だ。責任追及はしない。死因や経緯から予防策を導き出すことに主眼がある。詳細は非公開だ。

連載第1回では、小学校の卒業旅行に行った12歳の娘を突然失った母親と、5歳の幼稚園児を亡くした母親のケースを紹介。個人での検証に限界を感じ、CDRに期待を寄せる。

さらに全国に先駆けてCDRを試行する滋賀県の取り組みを取り上げる。報告によると、過去3年間に亡くなった18歳未満の約130人のうち、なんと3割、人数にして40人余りが「防ぎうる死」と分析された。

「病死以外の全ての死は、防げたかもしれない」

第2回 「交通事故」にも挑む

幼い命を奪う不慮の事故。「窒息死」と並んで多いのが、「交通事故」だ。連載第2回では、交通事故にも挑もうとしているCDRの取り組みを伝える。

もちろん交通事故死の検証は、既存の組織も手掛けている。だが、CDRがそれらと競合することはない。検証によって見つかった改善すべき事柄に優先順位を付けたうえで、予防ができないかを検討。実現性や有効性があると考えられた予防策を取りまとめ、提言する。地域の実情も踏まえながら、ガードレールや信号機の設置などハード面の対策も必要に応じて打ち出していくのだ。

コロナで休校。小学3年生の8歳の男の子は、母親の店に行く直前の横断歩道でダンプカーにはねられ、亡くなった。

ダンプカーは時速40キロのまま、スピードを緩めることなく、横断歩道に侵入していた。ある調査によると、信号機のない横断歩道における車の一時停止率は、全国平均でわずか21.3%。およそ8割ものドライバーが停止しないのだ。

「CDRって必要な制度や思います。でもなあ…道路の整備にしても、罰則の強化にしても。なんで、誰かが死なんと変わっていかへんのやろ?」

第3回 「虐待」が生んだチャイルド・デス・レビュー

「そうです。最初のCDRを始めたのは私たちです」
連載第3回では、CDRの成り立ちを追う。

1960年代のアメリカ、「児童虐待は特殊な家庭の出来事ではなく、一般家庭でも日常的に行われている」という報告が全米を揺るがした。虐待? 被害に遭っている子どもはそんなに多いのか? そんなに身近にいるのか?

「私は致命的な虐待についてほとんど知られていなかった時に、CDRチームを始めました」とマイケル・ダーフィー氏は語った。

一方、厚生労働省が主導する日本のCDRは、現在どのように進められているのか。

2019年度に採用された厚労省科研費補助金事業で研究代表者を務めるなど、日本のCDRで重要なポジションにいる沼口敦医師。「医者って、すごく閉じられた世界で生きています」と語る彼は、いろいろな専門家が立場によって違う意見を持ち、話をするCDRは斬新だったと指摘する。

そのうえで、モデル事業のメリットについて、役所が主導しているという一点に尽きると語った。その理由とは。

第4回 モデル事業に初の詳細調査を実施

前例のないCDRのモデル事業、参加した7府県はどのように臨んだのだろうか。取材班は2021年の夏、7府県にアンケートを行った。CDRのモデル事業を対象にしたこうしたメディアの調査は、おそらく初めてだ。連載第4回は、その回答から見えてきた事業の実情と課題を伝える。

アンケートの質問は全部で16項目。主な問いは、次の通りだ。
・モデル事業への参加経緯は。
・モデル事業の提言を行った後、提言内容の周知を図ったか。
・責任追及の場面はあったか。
・モデル事業をきっかけに新たな取り組みを始めたか。
・CDRは現行制度内で導入可能と思うか。課題はあるか。

ある日、生後8カ月ほどの男児が救急搬送されてきた。体はげっそりとやせ細り、息も絶え絶え。
「衝撃でしたよね。虐待と言う言葉がなかった時代やけど、今考えたらネグレクトだったんじゃないかって思いますよね」

取材に応じた三重県の梅本正和医師は、CDRは未来への投資であると確信し、この取り組みをさらに進展させたいと強調した。

一方で、「3つの壁」を感じていたとも明かす。1つ目は「守秘義務の壁」。2つ目は、子どもの事故予防を考える文化のない「警察の壁」。3つ目は、何でも自分のところだけで完結させようとする「学校・教育の壁」だという。

記事には、アンケートの詳細結果のデータも掲載。見えてきたもう一つの「壁」も明らかにしていく。

第5回 “退化”する政府の姿勢

第1部の最終回となる連載第5回では、日本版チャイルド・デス・レビューの実現を阻む“真犯人”は誰なのかを探る。

「今のCDRモデル事業を見ているとねぇ…。あいつら絶対(持っている情報を)外に出さないっていう感じ。すでにそこからしても、頓挫している。そういうふうに見えますよね」

CDRに限らず、日本の官僚機構は縦割り問題を解決できぬまま内側に抱え込み、長い年月を費やしてきた。異なる組織間の情報共有は結局、今も大きな課題として残っている。                 

そして「そもそも一般的に『人の死』を検証しない日本の法医のシステムの方が問題があると思います」という、CDR以前の問題についての指摘も。

行く手を阻む大きな要因とは。

第2部、第3部も展開へ

今回は第1部、全5回の連載となりますが、今後、第2部、第3部も展開していきます。

まず第2部では、日本版チャイルド・デス・レビューが実現できるかを様々な側面から検証。ある小児科医がアメリカで経験したCDRの現状とは。ほかの先進国との制度上の違いは。遺族の思いをどう反映し、死因の究明ができるのか。

そして第3部では、CDR以前に行われてきた、死を防ぐ先進事例、学ぶべき対策や課題について検証します。

フロントラインプレスの多数のメンバーが参加した大型連載。大切な命を守っていくのに必要な視点と、議論の材料を提示していきます。

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