元自衛官・五ノ井さんへの性暴力裁判で、現役自衛官が新たな目撃証言「陰部が接触していた」
スローニュース 岩下明日香
元自衛官の五ノ井里奈さん(23)への強制わいせつの罪に問われている元同僚3人の3回目の裁判が23日、福島地方裁判所で開かれた。検察側の証人として出廷した現役自衛官3人のうち1人が、被告が「疑似セックスのような体勢」で腰を振り、五ノ井さんの着衣越しに陰部が接触していたのを「見た」とする新たな証言をした。
これまでは「距離が離れていた」などの目撃証言だったが…
陸上自衛隊郡山駐屯地(福島県)で五ノ井さんの同僚だった渋谷修太郎(30)、関根亮斗(29)、木目沢佑輔(29)の3被告は、2021年8月3日に五ノ井さんの首に手をあてる格闘の技をかけて押し倒し、下半身を押し付けるなどしたとして、強制わいせつの罪で在宅起訴された。いずれも否認して無罪を主張している。
前回の裁判では、証人として出廷した元上司が、被告らが性行為を思わせるかのように腰を振っていたことは認めたものの、「(五ノ井さんが倒された)ベッドから距離はあった」と述べていた。
23日の裁判で証人として出廷した現役自衛官3人は、いずれも事件が起きた時、同じ部屋に居合わせた当時の同僚だ。
検察官が、渋谷被告が五ノ井さんに技をかけて押し倒した後の体勢を問うと、証人のうち1人は、「疑似セックスのような体勢」「正常位のように覆いかぶさっていた」と語った。
そして検察官から、「陰部は着衣越しにあたっているように見えたか」と聞かれ、「はい、見ました」と即答した。元上司とは違う新たな証言だった。
その時、渋谷被告は「うぇーい!」と芸人レイザーラモンHGのネタを披露するようにふざけ、部屋中に笑いが起き、自身も笑っていたと語った。
3被告とも同じ行為をしていたのか
前回の裁判では、証人の元上司は3被告のうち、2人については「腰をふっていた」のを認めていたが、木目沢被告については「記憶にない」と語っていた。
今回の新たな証人のうち1人も、同様に木目沢被告については目撃していないとした。
ただ、別の証人は木目沢被告について、「木目沢らしき人が渋谷被告と同じような行為をしていた」と証言した。だが、体格と髪型で判断したため、断定できないことを示唆した。
また3人目の証人も「物音がしたので振り返ったら、(木目沢被告が)渋谷被告と同じ行為をしていた」と述べた。
現役自衛官たち「感覚がマヒ」
今回出廷した3人の現役自衛官は、実は事件直後に受けた警務隊の事情聴取に対して、「見ていない」などと目撃を否定していた。だが、翌年の特別防衛監察によって始まった再調査では「見た」と証言を改めた。
その理由について、証人の1人は「男性社会の中で感覚がマヒしていたことを後悔した」「良き先輩3人(被告ら)がこのような状態になったのがかわいそうだから」などと、涙を流し、声を詰まらせながら述べた。この証人は、被告らの顔が見えないよう、衝立を立てる遮へい処置をとった。
もう1人の証人は、現在は別の駐屯地に異動している。五ノ井さんが所属していた郡山駐屯地の第2中隊では、一部の男性隊員が女性隊員に対して、プライバシーに踏み込むようなことを聞いたり、下半身を触るボディータッチが横行していたりしていたとも証言した。
「前の部隊が異常だった」「事の重大さに気付き、自分に言えることがあると思い、話すことにした」という。
裁判を傍聴した五ノ井さんは、3人の証人について「先輩だからこそ、あの現場を見ていたんだったら、しっかり注意してほしかった」と心境を語った。
次回の裁判は9月12日に開かれ、2人の被告に対する尋問が行われる。