自民議員はなぜ「パーティー券収入」にしがみつくのか、そしてカネがかかる一番の理由とは【全議員データで見えた政治とカネ④】
国会議員全員の関係する団体の政治資金収支報告書をデータベース化して分析する取り組み、4回目は「各党の収支の違い」を取り上げます。
前回の衆院選の翌年、2022年のデータベースをもとに分析したところ、なぜ自民がこれほどパーティー券収入にこだわるのか、収支の構造が見えてきました。
そして最後に、真の「闇」が浮かび上がります。
集計:「政治資金データベース」制作グループ/構成・文:熊田安伸
与党と野党の「資金調達額」の差から浮かぶもの
まずは2021年の衆議院選挙の翌年、2022年の衆議院議員1人当たりの収入についての分析からです。収入には「政治献金」「パーティー券収入」「党費または会費収入」など、すべてを含みます。
想定していたことではありますが、明確になったのは与党議員の方が年間資金調達額が圧倒的に多いこと。以下は小選挙区で選出された議員を比較した数字です。
自由民主党議員 4654万円
公明党議員 3020万円
立憲民主党議員 1426万円
日本維新の会議員 1398万円
自民党と野党第一党の立憲民主党の議員では3.3倍もの差になります。やはり法案・政策への影響力などを考慮して、与党の政治家に資金提供することに意味があると考える寄付者が多いということでしょうか。
ところが、これが比例復活の議員となると、少し差が縮まるのです。(公明党は比例復活なし)
自由民主党議員 3246万円
立憲民主党議員 1174万円
日本維新の会議員 1311万円
依然として自民と立民で2.8倍の差はあるものの、自民党議員は平均で1400万円以上も調達額が減り、一方の野党側は減らしてはいるものの、それほど大きく変わらないことがわかります。野党の支持者は、小選挙区で勝とうが、比例復活だろうが、それほど寄付に差をつけていないということでしょうか。
では、小選挙区と比例復活の差はどうして生じたのか。比例単独の議員も含めて分析してみます。
自民の小選挙区と比例復活議員の資金力の差、その理由はパーティー券収入だった
同じ党でも差が大きかった自民党の議員で比較してみましょう。すると、以下のような結果が出ました。
小選挙選出の議員 4654万円
比例復活の議員 3246万円
比例単独の議員 2804万円
小選挙区と比例復活の議員の収入で1400万円もの差が生じた中身を詳しく見てみると、大きく違ったのは、「機関紙誌の発行その他の事業による収入」でした。この費目、実はほとんどが政治資金パーティーによる収入なんです。つまり、小選挙区と比例復活の議員では、パーティー券収入に歴然とした差があるということが浮かび上がってくるのです。
比例復活の議員は小選挙区で敗れたからパーティー券収入が集めにくいのか、それとも、もともと集金力があった議員が小選挙区で勝っているのか、どちらが理由なのかはわかりません。
※各政党の収入を比較したデータは文末に!
本部からもらえる交付金で収入に4.5倍もの大差がつく公明議員
では、他の政党ではどうでしょうか。公明党のケースを見てみます。
小選挙区選出の議員 3020万円
比例単独の議員 667万円
こちらは自民よりもさらに収入の差が大きく、4.5倍もありました。理由は「本部又は支部から供与された交付金に係る収入」に大きな差があったからでした。
小選挙区選出議員への交付金 2070万円
比例単独議員への交付金 648万円
比例単独の議員は、3分の1以下の交付金しかもらえないのです。また、比例単独の議員には個人などからの寄付金もほとんどありません。
ちなみに自民党の場合、小選挙区・比例復活・比例単独で、交付金に差はありません。いずれも一律、1300万円台となっています。立憲民主党と日本維新の会も一律1000万円程度で、小選挙区と比例議員で差をつけていません。立候補の形態で交付金に差をつけているのは、この中では公明党だけになります。
さらに、公明党の議員は「機関紙誌の発行その他の事業による収入」=パーティー券収入にも差が見られました。
小選挙区選出議員のパーティー券等収入 760万円
比例単独議員のパーティー券等 0円
0円というのは、中央値なので、比例単独の議員はひとりも政治資金パーティーを開いていないというわけではありません。ただ、パーティーを開いているのはほとんどが小選挙区の議員だけだとわかります。公明党の組織的な選挙のスタイルが浮かび上がってくるような結果ですね。