政治とカネが見える原本の資料、ネットでオープンにしていないのは、いよいよ新潟県だけに
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今秋公表の政治資金収支報告書 新潟県のみ原本のネット掲載なし
いやダメでしょ。本当にダメ。いまだに何をやっているんでしょうか。
政治団体がどんな寄付を受けているか、いくらのパーティ券収入があるのか、それを何に使っているのかが分かる政治資金収支報告書。毎年、公表されるこの資料、届け先が総務省と都道府県の選挙管理委員会の二つに分かれています。
総務省に届けられた分は、総務省が2004年からホームページで公開してきましたが、都道府県の選挙管理委員会に提出された分のネット公開は遅々として進みませんでした。でもこれ、どちらに届けられたものも合わせて調べないと、実態が見えてこないのです。
中でもずっと原本を公開してこなかったのが、新潟、石川、広島、福岡の4県。ですが、今年の秋の公表シーズンに、ついに他の3県は公開を始めたのに、新潟県だけは未対応でした。
公開したくない政治家に忖度? いえいえ、政治家にとっては、自分がクリーンなカネの使い方をしていると有権者に説明責任が果たせるチャンスでもあり、その機会を奪っているとみることさえできますよね。
事務の手間がかかるといいますが、現在のように原本ではなく要旨を掲載する方が、かえって手間がかかるのではないでしょうか。
そんな新潟県が、来年からはネットで公開をすると発表しました。ところが、国会議員分は公表するものの、県議の分は「いつになるか未定」だとか。全く困ったものです。
でも、他の都道府県も、これで万全のネット公開になったかというと、実はそうでもないのです。総務省も都道府県の選挙管理委員会も、基本、公開期間は3年だけで、古いものは見えなくなってしまうからです。
国立国会図書館の「インターネット資料収集保存事業」でアーカイブは見られるのですが、そのアーカイブを使ってネット上で調べられる都道府県は半分あまりで、多くの都府県が国会図書館にネット公開の許諾を出しておらず、わざわざ国会図書館に行って閲覧したり、紙で印刷したりしなければならないのです。
「ネットでの情報公開が進んでいる」と胸を張る東京都でさえ、そんな状況なのですよ。こちらも、ぜひ改善をお願いします。
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ところで話は変わりますが、この政治資金収支報告書、しっかり読み込めば、おかしなことにも気づけます。1年前にしんぶん赤旗が報じた、自民党5派閥のパーティー券収入不記載問題、告発を受けた東京地検特捜部が動き出して、注目されていますよね。
その行方はさておき、一連の報道で気になったのは、「最初にしんぶん赤旗が報じた」という書き方を大手メディアでしているのが朝日新聞ぐらいだということ。(すべてに目を通しているわけではないので、見落としているかもしれません)
初報したメディアがどんな小さなところであっても、その名前を入れて報じるのは世界のメディアでは当たり前のこと。日本でもかなり改善されてきているとはいえ、いまだに「一部週刊誌によりますと」なんてわざわざ書くメディアもあり、こういうところは直してほしいですよね。(熊)
(毎日新聞 2023/11/15)
(新潟日報 2023/11/21)
(しんぶん赤旗 2023/11/22)
(朝日新聞 2023/11/21)
※サムネイルは新潟県選挙管理委員会のホームページより