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ある家族の悲劇からイスラエルの無差別攻撃を検証したCNNの「ド迫力」調査報道
あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。
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家族の半分がイスラエルの無差別攻撃で死んだ――ガザの惨劇、CNN調査報道で実態解明
ローバ・アブ・ジッバの顔は、右半分の大きな部分がなくなっていた。右目があるべき場所には、深い、血まみれの傷があった。
パレスチナ自治区ガザ中部デイルアルバラにあるアクサ殉教者病院。ストレッチャーに横たわる18歳の女性は、意識が混濁し、苦痛に襲われながら、自分の身に何が起きたのかを語ろうとした。一家は2カ月前から、ガザ地区を南北に貫く主要道路、サラハディン通りに面した工業倉庫に身を寄せていた。その倉庫がイスラエル軍の激しい砲撃に遭った。
ローバはかすかな声で、自分たちが銃撃され、爆破され、ブルドーザーになぎ払われた経緯を振り返った。一緒にいた兄弟姉妹は目の前で死んだ。母親と兄弟姉妹のうち3人は脱出できたが、どこへ行ったのかは分からなかった。
ガザで空旗をたてて「避難家族」だと明示していたにもかかわらず、攻撃にあい深刻な被害にあった民間人について取材したCNNの調査報道は、まさに総力をあげる取材で力が入っています。
CNNは偶然、瓦礫の間から被害者の身分証明書を拾ったのをきっかけに、ガザでのイスラエル軍の行動を検証し、民間人を攻撃しないための十分な対応をしていない可能性が高いという疑惑を、あらためて提示します。
その手法は記者による取材、公開情報などを分析するOSINT、科学者の分析などを組み合わせた徹底したものです。
その手法は、まず家を追われた人々が避難する工業倉庫の所有者や、人々が治療を受けた病院に接触。彼らの証言を裏付けるため、ガザやエルサレム、ロンドンにいる記者が現地報告とオープンソースの技術を駆使しました。
このチームは当該の工業倉庫に落とされた弾薬の種類を決めるため、またその時期の確証を得るため、衛星写真やSNSソーシャルメディア上の動画や写真を調査した。こうした画像は射撃学の専門家や法医学に携わる病理医によっても検証された。その取材期間は2ヶ月にも及びます。
悲痛な記事ですが、同時に、デジタル技術を駆使したOSINTはもちろんですが、世界中の記者による取材という総合力に、「組織ジャーナリズム」にしかできない報道があることをあらためて感じます。(瀬)
CNN20240321