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トラック輸送の運転手のカーナビデータから分析した「2024年問題」の実情

 今年4月からトラック運転手の時間外労働に年960時間の上限が設けられました。これまで事実上無制限だった過酷な労働環境が改善することで、それによる健康被害や危険運転のリスク回避を目指した措置です。 一方で、運転手の不足は解消しておらず、これまでよりも運転時間が減ることから、物流が滞ることが「2024年問題」として懸念されていました。

では、実際にトラックの物流は減ったのでしょうか?日本経済新聞が、輸送距離や高速の車両通行台数といったデータをもとに計算した貨物輸送量から検証したスクープが、今日のおすすめです。

貨物輸送量は、輸送距離と輸送重量をかけて算出されます。

そこで日経新聞は、輸送距離については、経路検索大手のナビタイムジャパンが提供するトラック専用カーナビ「トラックカーナビ」の利用者データをを活用。輸送重量については、高速道路3社を通じてえた8高速道路の車両通行台数から、大積載量が5トン未満の「中型車」は微減、5トン以上の「大型車」は微増。さらに大きな4車軸以上のトラックや大型特殊自動車といった「特大車」は6%も増加していることなどから、試算しています。

それらをもとにトラック1台あたりの走行距離は短くなった一方で、大型車にシフトして輸送量を保っている実態を明らかにしています。

この分析をもとにかんがえてみると、貨物量あたりでみれば、CO2排出や生産性においても効率化をしています。一方で、トラック運転手の不足という根本的な問題が解決していないことも浮き彫りになります。

大型化により効率が上がるのであれば、その結果によりトラック運転手の報酬が上がり、人材不足も解消ということになれば好循環なので、そうなってくれるといいのですが。

データ分析だからこそわかる実情です(瀬)

このコラムは、あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしいという方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツなどをおすすめしています。