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「鰻重がタダだったら嬉しいですよね」 無借金経営を貫く京都のフリーマガジン『ハンケイ500m』編集長のこだわりだらけのインタビュー

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広告掲載料は0円。3万部がすぐに在庫切れ。京都の型破りフリーマガジン『ハンケイ500m』編集長/円城新子さん【編集者の時代 第8回】

雑誌冬の時代に、京都で発行部数3万部の無料で配られるフリーマガジンを発行する会社が、2011年から無借金経営を続けている。

なぜ、そんなことが可能なのか、フリーマガジン『ハンケイ500m』の編集長、円城新子さんに、Webメディア『CORECOLOR』編集長の佐藤友美が聞いたインタビューが、編集者の間で話題になっています。

ウェブでのリサーチなどは、ほぼしていません。ただただ、京都の街を歩くんです。歩いて、素性を明かさずお店に入る。もう、ミシュランみたいに(笑)。

──きっと、時間をかけて取材されているんでしょうね。
円城:2時間半くらいですね。うちは大人数で行くので、取材先の方にびっくりされます。編集長の私、副編集長、ライターさん、カメラのディレクターさんの4人で行きます。写真撮影は後日ですけれど、話を聞いて、どういうシーンを撮りたいのか決めるので、カメラのディレクターさんにも必ず同席してもらいます。

いまは雑誌でもなかなか実現しないような、手間をかけた取材ですね。断られたお店にも結果、普段は取材お断りの店も掲載される内容が評判となり、京都だけでなく、大阪や東京でも配布をしているといいます。いまは地元の京都新聞やKBS京都とも、コラボした企画も進めています。

とても興味深いのは、『ハンケイ500m』自体は、基本的には広告掲載料をとらないという仕組みだということ。円城さんの会社はクライアントから、パンフレットやウェブコンテンツを受注し、その制作費や企画費などを受け取る。その際に、コンテンツの作成を任せられれば、ハンケイ500mに掲載するという。

私は、ハンケイの紙面に関しては、できるだけ自由でありたいと考えています。広告掲載料として代金をいただいてしまうと、広告宣伝に対する効果への責任まで意識しなくてはならなくなる。そんなことを意識せずに、心底面白いと思えるコンテンツの作成に全力を注ぎたい。「うちが請け負うのは、コンテンツを納品すること」までにしたいと考えた結果、たどり着いた進め方です。

効果へのコミットメントばかりが求められることが多いネットメディアの現場で苦労している人には、ちょっと心に響くかもしれません。

このインタビューが面白いのは、ビジネスモデルだけではありません。

地元で取材するときのエピソードに、円城さんの人に対する興味、人生の喜びに対する考え方に、雑誌の作り手らしい多様な視点を感じます。そして、京都でずっと暮らしてきた人の語る京都人のこだわりの、ときにめんどくさい(すみません)エピソードも、笑ってしまいました。

「フリーマガジンを作りたい」と言う学生には、「よっぽど伝えたいことがないのなら、タピオカミルクティーの方が儲かるで」と答える円城さん。地域に根ざしたメディアのあり方を伝えるインタビューです(瀬)