「中学生1000人の進路」を追いかけたチャートから「普通」とはなにかを考える
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「ふつう」の人生を想像する
1枚のチャートが話題になっています。
龍谷大学社会学部准教授の松岡亮二さんが、世界思想社のwebマガジン「せかいしそう」への寄稿で紹介した、「中学生1000人の進路」というチャートです。
2009年に中学校を卒業した人が1000人としたときに、それぞれの進路に何人ずつ進んだのかを示す図です(2024年度に31歳になる学年です)。
たとえば大学を卒業した人が考える普通の進路、というと「中学卒業後は高校に進学し、4年制大学を4年で卒業して、正規雇用で同じ企業に勤め続けているる」ではないでしょうか。
しかし、実際にそのような人をこの図で見てみると1000人中の163人でした。その「普通」は決して大多数ではありあません。
まさに「思い込み」や「先入観」が打ち壊されるチャートです。
教育を議論するときに難しいのは、ほとんどの人が「教育を受けた」経験や、あるいは子供がいれば「教育をした」経験があることです。だからこそ、みなその体験に基づいた話になりがちです。でも、ほんとはそれは一部の体験にすぎないのです。
「ふつう」の人生とはなにか、を考えるときに、このチャートを思い出せば、自分の体験や知見は実は一部に過ぎないという客観的な視点を持つことを容易にするのではないでしょうか(瀬)