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不安や怒りを煽り社会を分断する兵器にもなる「ナラティブ」

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連載 人を動かすナラティブ

「ナラティブ」という言葉が広まっています。

日本語では「物語」「語り」などと訳されます。私たちは頭の中で無意識のうちにナラティブをつくり、その物語が生み出す感情が個人や社会を動かします。

近年、ナラティブを生み出す脳の仕組みが研究され、ときに「兵器」として利用されています。

ロシアは2016年の英国による欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)決定や米大統領選に介入したとされる英国拠点のデータ分析会社ケンブリッジ・アナリティカ(経営破綻)と連携し、そのノウハウを築きました。

国家同士のナラティブを利用して相手の国民や社会をコントロールしようとすつ戦いが「認知戦」です。

WBCからウクライナ戦争まで、近年国内外で起きたさまざまな事件や現象の背後に潜むナラティブのメカニズムとその影響力を、毎日新聞記者の大治朋子さんが『人を動かすナラティブ』という連載で紹介しています。

私たちはナラティブに囲まれて生きています。にもかかわらず、それがいかなる力を持ち、なぜ人間や社会を動かすのか、そのメカニズムをほとんど知られていません。

大治さんはイスラエルに留学し、人をテロに育てる心のメカニズムを研究するなど、アカデミズムとジャーナリズムとの接点をさぐる試みをしてきた方です。ナラティブに興味の湧いた方は、大治さんの著書、『人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか』もぜひ読んでみてください。(瀬)

(毎日新聞にて連載中)
※サムネイルの画像はUnsplash