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スポーツこそ調査報道で実態を明らかにすべき…辣腕ジャーナリストたちが語ったその手法とは

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

きょうのおすすめはこちら。

How — And Why — Journalists Should Investigate Sports(ジャーナリストがスポーツを調査する方法とその理由)

「スポーツの分野は、まだ手付かずだ」
そう語るのは、デンマークの調査報道ジャーナリスト、イェッペ・ローセンさんです。

スポーツの報道といえば、白熱した試合や選手の努力を描いた感動的なストーリーとか、記録などをもとにしたデータジャーナリズムはあるものの、薬物使用や性的搾取、選手の突然死、それに大会の誘致などをめぐる巨額の汚職など、報道すべき対象の多くは眠ったままです。

「世界調査報道大会」のパネルに登壇した3人のジャーナリストが、それぞれの方法論を披瀝。人脈の作り方、税関から入手した薬物情報をタイムラインで整理して追跡していく方法、賄賂を受け取った人物のリストをどう入手するかなど、これはもう経済事件報道とまるで同じですね。

でも、自らにスポーツの経験がないジャーナリストは不利ではないか。それについて、スウェーデンのラジオ局のエミリー・ローゼンさんは、スポーツ界とは違った視点で物事を見られるので、むしろ「アウトサイダー」の立場が利点となると説明しました。

やはり何に注目するかという「視点」こそ、報道の方向性や質をも変えますよね。

それで気づいたのが、米メジャーリーグの球団メッツをめぐる最近の報道です。

日刊スポーツをはじめ、日本の複数のメディアが注目し、引用したのは、「エンゼルス大谷翔平投手(29)が移籍に前向きなら、メッツのオーナーで大富豪であるスティーブ・コーエン氏が最高額でオファーする可能性がある」とするニューヨークのテレビ局の報道でした。

でも、現地の調査報道記者が、この大富豪オーナーについて注目しているのはこちらの話なんです。

メッツが、健康な選手をあえて故障者リストに入れていたのではないかという疑惑(試合のために連れていける選手の数が限られているので、こうすることで、実際には健康な選手をたくさん連れていける)が調査されていて、この報道は日本でも引用しているところはあります。

ニューヨーク・タイムズはさらに、3年前にメッツを約23億ドル(3400億円あまり)で買収したコーエン氏が、この問題を知っていたかどうか調査されると報じています。

コーエン氏はこの10年、インサイダー取引に関連してSEC(米証券取引委員会)に調べられるなど、最終的には不正はなかったとされたものの、話題の人となってきました。他の球団オーナーの中には、こうしたいきさつを理由に買収を阻止しようとする者もいたということです。

さらにニューヨーク・タイムズは、今シーズン、コーエン氏が選手の年俸に過去最高の3億7000万ドル(550億円あまり)などを投じたことについて、フリーエージェントの市場を歪めているとオーナーたちの反感を買ったとも指摘しています。先の記事のように、大谷選手に「最高額」を示せば、これもまた米球界では別の意味合いをもって受け止められるのでしょうか。

スポーツの世界は、記者にとって未開拓の領域がまだまだあります。さまざまな視点での報道を、もっと読みたいですよね。(熊)

(GIJN 2023/10/6)
(日刊スポーツ 2023/9/19)
(Tne New York Times 2023/10/6)


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