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裏金事件で非公認にしたのに「活動費」2000万円提供、自民の「党勢拡大のため」という説明は通るのか、そして議員たちは本当に「知らなかった」?

驚くべきスクープが出ました。23日のしんぶん赤旗の「裏金非公認に2000万円 公認と同額 自民本部が政党助成金」という記事です。

裏金事件で非公認となった自民党の議員が代表を務める政党支部に、党本部から「活動料」として政党助成金の2000万円が振り込まれたというのです。

なぜ2000万円なのか。自民党の議員が代表を務める政党支部の政治資金収支報告書などを分析してみると、その意味が浮かび上がってきます。

自民党は、毎年定期的に党本部から一定額の政党助成金を支部に対して交付しています。しかし選挙の年だけは違うのです。前回の衆議院選挙があった、2021年の収支報告書を見てみると、衆議院が解散した10月14日の翌日の15日に、小選挙区選出議員が代表を務める支部に対して1500万円程度を交付していることがわかります。

赤旗の報道によれば、今回も公認した議員が代表を務める支部には、解散翌日の10日に活動費1500万円と、公認料500万円が交付されています。一方、非公認の議員が代表の支部には、その合計額と等しい2000万円が振り込まれたということです。

これについて石破首相や森山幹事長は、「党勢拡大のための活動費として支給した。候補者に支給したものではない」と説明しています。その説明で、納得できるでしょうか。

衆議院が解散した後にイレギュラーに出されるこの交付金は、私が過去に取材した自民党の関係者も「選挙のための支援」と認めてきました。なぜ公認の議員の支部に交付金を提供したのと同じタイミングで渡す必要があるのか、十分な説明がありません。

百歩譲って今回は党支部の活動に限るとしても、公認料と同額の500万円分をわざわざ上乗せしたことについても、納得できる説明が必要です。

次々と「迷惑だ」という議員、でも疑問が…

この問題が報道されたあと、非公認で2000万円を受け取った議員たちが、「要望をしていない」「知らなかった、迷惑だ」「びっくりした」などと次々と語っています。

しかし、疑問を感じざるを得ないのは、交付金については党本部から連絡が行っているはずだということです。知らせもせずに、ただ入金ということがあるのでしょうか。

それよりもっと不思議なのは、「選挙の時には党から1500万円もらえる」というのは、議員や秘書たちの間では非常によく知られた話で、もらう前から「何に使おうか」と、計画を立てるレベルのものなのです。本当にそんな恒例のことを「知らない」などということがあるのか、あるいは、非公認だから今回はもらえないと思っていたのか。そこまでの詳しい説明は聞こえてきません。

報道がなければ来年11月まで埋もれていた

それにしても凄いのは赤旗の取材です。もし今回の報道がなければ、自民党が非公認議員に交付金を出したことを知るには、来年11月の政治資金収支報告書の公開まで待たなければならず、そのころには問題が今ほど注目されなくなっていたかもしれません。

赤旗はこの記事の前にも「非公認が党支部の代表のままなのはおかしい」という記事を出しており、今回のスクープはその問題意識/視点からの延長だということです。オープンデータも重要な政治とカネの取材ですが、これはヒューミントな情報収集を重ねてきた成果です。

しかしその一方で、楊井人文さんの赤旗の報道に対してのこの指摘もうなずけるものです。すごいスクープだからこそ、インパクト重視よりも、一層、丁寧に書く必要があったのではないかと思います。そうしていれば、自民党側の「意図的な報道だ」という反論は難しかったのではないでしょうか。

いずれにせよ、政治不信を払拭するというのであれば、より理解を得られるような説明が必要だと思いますし、そもそも多額の交付金が配られる背景には現行の「政党助成制度」があります。議員数などによって交付金が傾斜配分される制度そのものの見直しが必要なところに来ているのではないでしょうか。(熊)

このコラムは、あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしいという方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツなどをおすすめしています。