30代記者が聞き手に挑む『柄谷行人 回想録』が連載中
あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。
きょうのおすすめはこちら。
人生を振り返ることについて:私の謎 柄谷行人回想録
日本を代表する思想家、批評家の柄谷行人さんに、生まれてから現在までのこと、まだ書いていないことを聞くというインタビューが、月1回、朝日新聞と出版社が運営するサイト「じんぶん堂」で連載をしています。
私自身は柄谷さんの熱心な読者というわけではありませんが、幼少時代にはじまり、デビューのきっかけや遠藤周作、中上健次との出会いなど、興味深い話がつきません。
聞き手である朝日新聞文化部の滝沢文那さんはまだ30代の記者という点も注目しています。大御所へのインタビューには文化部の大ベテラン記者があたることも多いのですが、「私はこの世界をよく知っている」感が強くにじみ出ていて、私のような一見さんには敷居が高いことも少なくありません。
今回の連載では、滝沢さんが、細かく丁寧に聞いているのでわかりやすいと同時に、過去のエピソードなどの引き出し方から相当な知識のバックボーンをもって質問をしていることが伝わってきます。このあたり、やはり新聞社の底力を感じます。
一方、「半生を聞く」という触れ込みにしては家族との関係などはあまり深くつっこまずにあっさりすませている点は、それが意図かもしれませんが、個人的には物足りなさを感じる部分もあります。
連載はようやく1970年代にさしかかったばかり。文壇、論壇での活躍はこれからが本番なので、期待したいと思います(瀬)
(じんぶん堂 連載中)