いまだ秘密に包まれる死刑制度、知られざる刑場の「非公式見学」を大ベテランが明かした
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死刑廃止を考える社説を書いたら、俵孝太郎さんから職場に電話が
92歳のベテランジャーナリスト、俵孝太郎さんが今から56年前の1967年に、非公式な形で東京拘置所の刑場を見学したいきさつを、朝日新聞の井田香奈子論説委員に明かしました。
当時の田中法相が突然言い出し、同時に23人に一斉に死刑を執行したことも明らかにしたということです。法相の異様なまでのアピールだと、ほとんどのメディアは報じませんでした。
死刑制度は、誰に執行されたのかを公表するようになったのもわずか16年前から。メディアに刑場を公式に公開したのも一度きりで、情報公開の流れに逆行し続けています。
今年度の山本美香記念国際ジャーナリスト賞を受賞した、宮下洋一さんの『死刑のある国で生きる』にもあるように、世界では死刑廃止が潮流です。ただ、まさにこの本にある通り、死刑制度をめぐっては、各国で様々な議論があります。
しかし、情報を公開しなければ、そもそも制度の是非を議論することさえ十分にできない。それを改めて感じさせられました。(熊)
(朝日新聞 2023/8/22)
(新潮社 2022/12/15)
※サムネイルの画像は刑場がある東京拘置所 ©Google