亡くなる前、竹内前県議の個人情報の削除を要請したのに、プラットフォーマーは放置していた!改めて問われるSNS運営のあり方
兵庫県の竹内前県議が亡くなったことについては、多くの人がショックを受け、心を痛めていると思います。
本人の心をのぞかなければ分からないことは多いのですが、生前に「ネットでの誹謗中傷や根拠のない臆測による批判などに悩んでいた」ことは周囲の証言から明らかです。どれだけのストレスを感じていたことでしょうか。
百条委員会で告発文書問題を追及していた竹内前県議へのデマが拡散し、それにともなって自宅への嫌がらせの電話や、「ピンポンダッシュ」が行われていました。実はその背景には、竹内前県議の知人が彼の個人情報をSNSに投稿していたことがあると、神戸新聞が明らかにしています。
問題は、投稿に気づいた別の知人らがプラットフォームに通報したのに、プラットフォーム側からは「対応できない」旨を伝える返答しかなく、一切、対処が講じられなかったことです。結局、知人らが投稿者を説得して削除されましたが、その間、個人情報はさらされ続けていました。
プラットフォーマーがこのケースで回答したのと同じ文面を私も見たのですが、具体的なことは何も書かれておらず、「コミュニティ規定に違反しているものは処理しているが、これは削除されなかった」と、とにかく機械的に回答しただけの、実にそっけない文面でした。
表現の自由の観点からは、SNSへの投稿を安易に削除するという判断は極めて難しいものです。しかし今回のようなシンプルに個人情報を掲載し、さまざまな形での加害に直接つながると容易に推察できるものを放置するのは、あってはならないのではないでしょうか。プラットフォーマーについては、「フェイク広告」が問題となっていましたが、偽情報、誤情報と同様、いや場合によってはそれ以上にこうした攻撃的な情報発信こそがより危険なのではないでしょうか。
プラットフォームの在り方を議論する際には、こうした観点も重要になってくると思われますし、プラットフォーマーが自らこうした問題に対処できないのであれば、強い権限をもって発信を制限されるような方向に行く可能性も出てくるのではないでしょうか。
神戸新聞はこの記事と同時に、2020年にSNS上で誹謗中傷されて自死した木村花さんの母の響子さんのインタビューも掲載しています。
この中で響子さんは、「根拠のないデマに対しても発信者とプラットフォームを取り締まる法律が必要だ。現時点では法律がSNSに追い付いていない」と、強い指摘をしています。
プラットフォームの「中の人」からは、「対応しようにも実はそんなに人員がいない。機械的にチェックするしかない」という話を聞きます。しかし事はそんな悠長な状況ではありません。自由な言論の場を真に作り上げたいのであれば、プラットフォーマーがより精緻なチェックができる体制を作ることは、もはや絶対の条件なのではないでしょうか。(熊)