借金から小遣い、家族の職業や食費まで半強制的に提出させる郵便局長会は何が狙いなのか
あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。
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【独自】借金、食費、小遣い額まで…個人情報提出を半強制 九州地方郵便局長会
家計の収支にはじまり、個人の借金やもらっている小遣いの額、家族の職業や食費、子どもの授業料に至るまで、全部「カードに書いて提出を」と求めるーー。個人情報の管理に向けられる目が厳しくなっている今の時代に、いったい誰がどういう目的で、そんなことをしているのでしょうか。マイナンバーカードの情報どころではなく、にわかには想像できませんよね。
西日本新聞によると、九州の小さな郵便局の局長が所属している「九州地方郵便局長会」が、局長たちに求めていることなのだそうです。半ば強制的だということで、驚きます。
横領など不祥事を防止するためだということですが、ちょっと待ってください。それは局長たちが務めている「日本郵政」という会社が考えるべきこと。郵便局長会は、会社とは直接的には関係ない、単なる外部の団体なのです。
西日本新聞は、こうした郵便局長会のおかしさ以外にも、郵政の組織と政治、選挙をめぐる問題などを調査報道するシリーズ「ひずむ郵政」を2018年の8月から続けています。上で紹介した記事を含め、これまでに139本を配信する長い取り組みになっています。
このほど、第3回の調査報道大賞の優秀賞にも選ばれました。取材に取り組んできた宮崎拓朗さんは行政や警察の取材を通して、「組織が問題を隠蔽したり、うその説明をしたり、発覚したら下のせいにしたりする場面を何度も見てきた」といいます。そういう積み重ねの成果による報道なんですね。
それにしても郵政の問題は根深い。西日本新聞の報道がこれだけ長く続いていることでもわかりますし、ダイヤモンド・オンラインも「昭和の巨大組織の病根を解明する」として、「変われない組織」郵政の問題を報じ続けています。
かんぽの問題では、NHKの経営委員会が「クローズアップ現代」をめぐってNHK会長に厳重注意をするという異様な事態になっていることも、毎日新聞の報道で明らかになりましたよね。
巨大組織の「変われなさ」は本当に根が深いものです。一つの報道ではなかなか変わりませんが、少しずつでも影響はしています。それぞれのメディアが息の長い報道をしていくことは、重要なことだと思いますし、それを続けている西日本新聞には、改めて敬意を表します。(熊)
(西日本新聞me 2023/10/8)