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クジラ漁が批判された町に住み込んで取材した『太地町のいま』

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取材断られ…記者は町に住み込んだ 米記録映画で論争、漁師たちの今

伝統的なイルカの追い込み漁がつづく和歌山県太地町。そこに家を借りて、長期間住み込んで取材をした朝日新聞記者による新しい連載『クジラのまち、その後』に注目しています。

太地町は江戸時代は「古式捕鯨」で栄えましたが、いまや人口3000人を切る小さな漁師町です。

その町が世界的に話題になったのは、2009年に公開された米ドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」は、伝統的な追い込み漁を批判的に描き、米アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞したときです。

漁の手法が残酷だと世界的に批判される一方、漁師たちを追いかけ、ときには強引にその邪魔をする海外の動物保護団体による反対運動は、活動資金集めのためのパフォーマンスという指摘もおきました。

私自身も、この太地町を巡る混乱をドキュメンタリーで描いた佐々木芽生監督の『おクジラさま ふたつの正義の物語』の制作に協力をしたこともあり、この問題には当時関心をもっていました。

しかし、時間がたったいま、恥ずかしながら、すっかりその問題から関心が失われていたところに、この連載が始まって、がっつんとやられました。

太地町に家を借り、長期に渡って住み込んで取材をした記者の連載は、まだはじまったばかりですが、取材のきっかけになったという、町での反対運動の中心が外国人ではなく日本人になっているという導入からとても気になります。(瀬)

(朝日新聞 2023/8/10)
※サムネイルの画像はGetty Images