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無実で死刑判決…冤罪事件を生み出した刑事が法廷で明かした「改心させる」という取り調べのあり方

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きょうのおすすめはこちら。

西山美香さんが好意を持った刑事に直接質問 机バンバン「こうやって叩きませんでしたか?」


無罪判決で「虚偽自白を誘発した疑いが強い」と指摘された刑事の反省なき証言には驚きました。

当時つとめていた病院の入院患者を殺害したとして殺人罪で懲役12年の刑で服役、しかし出所後の再審公判で無罪となった滋賀県の元看護助手西山美香さんが、国や県に国家賠償を求めた訴訟で、西山さんの取り調べを担当した男性刑事が証人として出廷したようすを詳しく報じた中日新聞の記事が読み応えがあります。

特に、迫力があるのは、西山さん自身が、刑事に質問をする場面です。

―取り調べ中に椅子を蹴ったりしなかったか
していない
―本当に?
はい
―(廷内に大きな音が響くほど机をバンバンと強く叩いて)こうやって叩きませんでしたか
していません
(滋賀県代理人弁護士が「質問が威迫的だ」と抗議)

質問が威圧的だという抗議は、まるで悪い冗談のようです。

ぜひ記事を読んでみてください。

それにしても、この刑事の証言でとても気になったのは、取り調べについて「容疑者を改心させる」と繰り返していることです。

もちろん取り調べ段階では、判決が確定しているわけではありません。本来、さまざまな証言を引き出すことが取り調べの役割です。そして、それを検証していくのが捜査当局の本分です。

しかし、実際にはこの刑事のように、犯人だという先入観を持ち、それを否定する証言をすれば、嘘をついているのだから「改心」させようというのが、捜査側の実態です。

そしてこの姿勢が、「自白」するまで保釈しない「人質司法」とあいまって、これまで数多くの冤罪事件を生む温床となってきました。

今回、冤罪が確定しているにもかかわらず、裁判所から「虚偽自白を誘発した疑いが強い」とまで指摘された刑事自身が、その点についてまったく反省をしていないことには驚き、そして戦慄します。

裁判報道は概要だけでなく、こうした詳細まで報じることで、伝わることがあります。

人質司法については5月25日の東京新聞の記事も、衆院議員秋本真利被告(4の勾留期間が8カ月を超えている問題をとりあげています。

こちらも重要な指摘です(瀬)

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大津地方裁判所
著作者:KishujiRapid  CC 表示-継承 4.0