見出し画像

ロシアのオンライン・ヘイト・グループ「男の国家」の卑劣な手口

取材・執筆:ベリングキャット差別監視プロジェクト
翻訳:谷川真弓

2021年10月18日、ロシアの州都ニジニ・ノヴゴロドの法廷で、〈男の国家〉(Muzhskoye Gosudarstvo)と自称するオンライン・ミソジニー・グループのちんぴらたちは運命の分かれ道に立っていた。

その数週間前、地方検察局は〈男の国家〉を起訴し、「過激派組織」と認定し活動禁止処分を下すよう求めた。〈男の国家〉はウラジスラフ・ポツニャコフ――2018年に女性に対する憎悪を扇動した罪で有罪判決を受けている――によって創設され、数万人のメンバーがロシアのジェンダー平等に対するバックラッシュの先頭に立って活動し、ロシアおよび世界のメディアでたびたび報道されてきた。

アンナ・ベロワ裁判官は、〈男の国家〉の弁護士ザムボラット・ガバラエフの主張に説得されなかった。〈男の国家〉が行ったミソジニー・ハラスメント運動の詳細な証拠を示されたのに対して、ガバラエフ弁護士は「その女たち自身が、男性全体の信用を傷つけたのです」と抗弁した。数分間の審議の後、ベロワ裁判官は〈男の国家〉を過激派組織と認定し、国内での活動を禁止した。〈男の国家〉は控訴する予定だという。

判決が下されるまでのこの一年、〈男の国家〉はとても忙しくしていた。この数カ月だけ見ても、広告に黒人モデルを起用した会社を攻撃および脅迫し、フェミニストの抗議グループ〈プッシー・ライオット〉のあるメンバーの私的な連絡先情報をさらし――彼女はすぐに脅迫や嫌がらせを受けた――さらに、ロシア人でない男性と交際しているロシア人女性たちに脅迫文を送ったとされる。

勢いを増す〈男の国家〉の好戦的姿勢は、ロシア社会の一部に嫌悪感を呼び起こし、対応を求める声が高まっていた。

〈男の国家〉が現在のあり方のまま、今後も存続できるかどうかはわからない。しかし、テレグラムなどのヘイトスピーチを容認しているとして批判されているソーシャルメディア・プラットフォームを利用し、過激なハラスメントを行う〈男の国家〉のやり口は、簡単に模倣できるものだ。

最近になって〈男の国家〉はテレグラム・アカウントにおける2021年9月以前の投稿をすべて削除した。しかしベリングキャットのリサーチャーは、プライベートなグループチャットを含むすべての投稿をアーカイブすることに成功しており、それによってこの典型的なオンライン・ミソジニスト・ヘイト組織の成長――残念ながらこれはロシアだけの潮流とはいえない――の過程の全貌をとらえることが可能になった。

避難した一家

2021年夏、〈男の国家〉から渾身の憎悪を向けられたある家族にとっては、この判決は遅すぎた。

6月、ロシアのおしゃれな健康志向のスーパーマーケットチェーン、フクースビル(「美味の町」の意味)は、「幸せな家族のためのレシピ」と題した広告を出した。インタビューと写真を掲載された「幸せな家族」のなかには、モスクワ在住のLGBT+活動家と二人の娘、そして片方の娘の同性の婚約者で構成された家族がいた。

「私たちのお客さまの本当の家族について語らないのは偽善になります」と広告には書いてあった。同性愛を含む「非伝統的な性的関係のプロパガンダ」なるものを未成年に広めることを禁じる2013年施行のロシア法の要請にしたがい、フクースビルはこの広告に「18歳以上のみ閲覧可」とするレーティングをつけた。

広告に対する当初の反応には好意的なものもあったが、ロシアの保守派有名人が怒りを表明したことにより状況は一変した。たとえば、国営のニュース専門局RTのマルガリータ・シモニャン編集長は、もうフクースビルでは買い物をしない、とソーシャルメディアに投稿した。

〈男の国家〉も反応した。フクースビルの広告が出た翌日、テレグラム・チャンネルの投稿で、〈男の国家〉は広告に登場した一家を「ウンターメンシュ」と貶めた――これはナチスが用いた「劣等人種」という意味のドイツ語だ。ほどなくして、フクースビル社も広告の家族も、矢継ぎ早に攻撃を受けはじめた。殺害予告もあった。

数日のうちに、広告は消えた。フクースビルは「一部の従業員のプロとはいえない意識の露出」を謝罪し、広告を公式ウェブサイトから取り下げた。

そして、数週間のうちに、この一家も消えた。2021年8月、スペインに避難したと家族は明かした。

「単なる侮辱だけのよくあるヘイトではなく、本物の脅迫でした」と家族のひとりはロシアのジャーナリストに語った。「私たちの住所も、知人友人の情報もすべて、過激派組織にリークされました。彼らは身体的な暴力をふるうと脅してきました」

〈男の国家〉創設

2016年、地方の医療系大学を中退したウラジスラフ・ポツニャコフという名前のフィットネス・マニアが、ロシアのソーシャルメディア、フコンタクテ(VK)で〈男の国家〉という名前のグループを立ち上げた。

最初から、ポツニャコフは世間に認められることを強く望んでいたようだ。〈男の国家〉で一時はポツニャコフに次ぐ立場にいたドミトリー・ポポフによると、グループは当初は主に世間からの注目と広告収入だけに関心を持っていたが、そのうちに「女性をさらす投稿」によってその両方が得られることを学んだという。〈男の国家〉メンバーと衝突するか、グループが気に入らない投稿をするかした女性たちは、自分の写真や動画、私的な連絡先の情報が同意なしにグループでシェアされていることに気づいた。多くの場合、続いてハラスメントや脅迫がやってきた。

グループ内で見られる言葉遣いには、いわゆる「マノスフィア」の影響がある。動物界に関するすでに否定された理論に由来する用語を使い、男性を「アルファ(支配層)」、「ベータ(中間層)」、そして時々は「オメガ(下位層)」とカテゴリー分けしている議論すらある。しかし、〈男の国家〉メンバーとリーダーのポツニャコフは、白人以外のルーツを持つとされる人々、とりわけ黒人男性と交際しているロシア人女性に対しても、強い憎悪を見せる。

よって、〈男の国家〉の世界観の核はミソジニーでありつづけたものの、グループのイデオロギーは彼らが「国家的父権制」と呼ぶものと次第に合体していった。「国家的父権制」を旗印として掲げた〈男の国家〉は、フェミニストおよびLGBT+活動家から中央アジアおよびコーカサス地方の民までを敵と認定し、ロシアの腐敗・退廃と彼らが見なすものをもたらしたとして罵倒した。

2021年3月29日の〈男の国家〉テレグラム・チャンネルの投稿。侮辱的な言葉遣いで、女性がロシアに恥をかかせるのを阻止するには「国家的父権制」が必要だと述べている。チャンネルが2021年10月に「男の部隊」と改名された後の画像。

この極右的な主張の混合物は、どこからともなく出現したわけではない。ロシア語のインターネット界を専門とする研究者ターニャ・ロコットによると、〈男の国家〉が信奉する類の考え方――ミソジニー、ホモフォビア、そして伝統的な性別役割分業への強い支持――は、ここまで先鋭的に表現されてはいないものの、すでにロシアの社会的・政治的言論において「標準化」しているという。

「この類の考え方がすでに存在することを踏まえると、こういったグループが生まれるのも不思議ではありません。国家がミソジニーを認めることによって、〈男の国家〉のようなグループは非公式に奨励されていることになります」。国際的な市民メディアサイト、グローバル・ボイスの東ヨーロッパ担当編集者であるロコットは、ベリングキャットのインタビューでこう語った。

すでに削除された2021年1月9日の〈男の国家〉テレグラム・チャンネルの投稿。フォロワーに対し「女の本能は、対等な人間とではなく、主導的であり支配的な人間と一緒にいることを求める」、「我々が女を愛さなければ愛さないほど、女は我々を好む」と語りかける。後者はアレクサンドル・プーシキン『エヴゲーニイ・オネーギン』第4章の一節を踏まえたものかもしれない。

2017年には、ロシア各地の都市で〈男の国家〉の支部が作られはじめた。極東の都市ハバロフスクに作られた支部には、ロシア連邦保安庁(FSB)の情報提供者が潜入していた。同年12月に支部のメンバー4人が逮捕され、後に過激派の活動をしたとして有罪になった。報道によると、このグループはポツニャコフに監督されており、捜査の過程でもたびたび彼の名が挙がったというが、彼が公式な事情聴取や尋問を受けることはなかった。

2018年にロシアで開催されたワールドカップの期間中、ポツニャコフはロシアに試合観戦にやってきた外国人男性と交流するロシア人女性の写真や動画を投稿した。彼と支持者たちはそれを「恥ずべき」ものと見なしたのだ。女性たちはオンラインでもオフラインでも、ハラスメントを受け、脅迫された。

これはロシアの当局も看過できず、2018年9月にポツニャコフは女性に対する憎悪を扇動した罪で起訴された。執行猶予2年つきの有罪判決が下されたが、告訴の基盤となった法律が一部改正されたことに伴い、2019年にこの判決はくつがえされた。直後にロシアを離れたとポツニャコフは語っている。

2020年7月、〈男の国家〉と16万人のメンバーは、暴力を扇動したという理由でフコンタクテの使用を禁止された。その後、新たな活動の場として選んだテレグラムで、〈男の国家〉とポツニャコフを中心とするチャンネルのネットワークは拡大を続けた。

2021年9月30日の、〈男の国家〉テレグラム・チャンネルの典型的な投稿。LGBT、フェミニズム、「チャイルドフリー」を過激派と見なそうという提案を称賛している。子供を持たないことを自発的に選ぶ「チャイルドフリー」は、〈男の国家〉やその他の極右にとって、個人の選択の問題ではなく、反対すべきイデオロギー的姿勢だ。

「みんなが我々の忠実な仲間となって、我々と一緒に、わが人々の敵(中略)との情報戦を続けてくれることを願う」。活動がメディアに注目されてフォロワーが急増したことを祝い、2021年8月、〈男の国家〉はテレグラム・チャンネルにこう投稿した。

「我々の目標は、ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人、ポーランド人やその他のスラヴ民族を、一致団結させ融合することだ」と投稿は続く。「白人の家族に父権制を取り戻そう。そうすることによってのみ、家族は秩序と繁栄を保てるのだ。道徳と礼儀という概念に立ち戻り、寛容なリベラルのクズが押しつける馬鹿げたたわ言を一掃しよう。LGBTのクズの主張やその他の左翼の悪影響が、我々の子供たちの心に触れないよう押さえつけよう」

過激なミソジニー的思考が主流化しつつあるのではないかと感じさせる出来事が、2021年7月にふたたび起きた。ロシアの活動家たちが、内務省(MVD)内部の部署が〈男の国家〉と「活発な協力関係にある」と申し立てたのだ。〈男の国家〉が活動家たちの個人情報をさらしたことにより活動家たちはハラスメントと脅迫を受けたが、その情報が内務省の報告書に記載されているものと同一だったという。

当時議員だった元テレビ司会者のオクサナ・プーシキナは、この告発について内務省に正式な調査要請を行った。2016年から2021年まで議員を務めたプーシキナは、ウラジーミル・プーチンの与党・統一ロシアに所属しているにもかかわらずLGBT支持の姿勢をとり話題となった人物だ。法律により回答が義務づけられている内務省は、〈男の国家〉との関係を否定した。

「ロシアにおいて何らかの活動が勢いを増すと、裏で国の意向が働いているのではないかという推測が当然なされます。しかし私は、〈男の国家〉は上からの影響を受けていない自主的な運動だと思います」と、ロシアでの国家主義とゼノフォビアを監視するNGO、SOVAセンターの所長アレクサンデル・ベルコフスキーは解説する(SOVAセンターはロシアで「外国のエージェント」と指定されている)。「もちろん、当局にとって危険がなくて、ときには便利に使える急進派はありますし、当局がずっと黙認しつづけられるような小規模な急進派グループもあります」

しかし、〈男の国家〉はそのどちらでもない、と彼は言う。「〈男の国家〉は、人気になりすぎたし、メンバーも多すぎるし、話題にもなりすぎている……便利に使える可能性はゼロです。政府は反フェミニスト的な動きをとるかもしれませんが、女性全体に敵対するような行動を露骨にとることはないでしょう。それは正気の沙汰ではありません。〈男の国家〉は単純に急進的すぎるのです」

活動禁止命令が政治的観点からどう見えるとしても、今回の判決は人権活動家にとっては当然のものだった。「あれは本物の脅迫でした。〈男の国家〉は、はっきりと暴力やその他の犯罪を扇動しています」とベルコフスキーは締めくくった。

〈男の国家〉の(ほぼ)安全な拠点、テレグラム

2020年7月にフコンタクテを使用禁止となった後、〈男の国家〉はテレグラムに引っ越し、新しくチャンネルを開設した。「男の国家」という名前のメインのチャンネルには、2021年10月時点で4万5000人近くのチャンネル登録者がいる。

当初は誰でもアクセス可能だったメイン・チャンネルは、2021年8月にプライベート・チャンネル――テレグラム内で検索できず、特定の招待リンクを経由しないとメンバーになれない――となったが、削除された投稿を含む内容は、2021年10月時点ではまだtelemetr.ioのような第三者サイトを経由すればアクセス可能であり、分析もできる。

2021年1月に2万7000人弱だったチャンネル登録者数は、続く数カ月間に徐々に増え、2021年5月には2万9000人になった。しかし、〈男の国家〉のハラスメント運動のいくつかが注目を集めたり報道されたりしたのにともない、夏には新規登録者数が急増した。2021年8月には4万人、2021年10月頭には4万6000人でピークに達した。チャンネルには一日に数千通のメッセージが交わされるプライベートのグループチャットもあり、2021年10月時点で2300人のメンバーがいる。

2021年1月から10月までの〈男の国家〉チャンネル登録者数(telemetr.ioより)

2021年秋にロシア国内で〈男の国家〉の活動についての報道、そして活動禁止を要求する運動についての報道が増えた結果として、1000人超がチャンネル登録を解除し、〈男の国家〉はチャンネル内のすでに削除済みの投稿で去ったメンバーを罵倒した。

2021年10月、〈男の国家〉はチャンネルの過去の投稿のほとんどを削除し、2021年9月以前の投稿は見られなくなった。10月18日に活動禁止判決を受けた後の数時間で、〈男の国家〉チャンネルは名前とプロフィール画像を数度にわたり変更し、「男の力」から「男の道」を経て「男の部隊」という名になった。1500人超のメンバーが判決から24時間以内にチャンネル登録を解除し、ついでチャンネルは2021年10月17日(判決の前日)より前の投稿を削除した。

しかし、〈男の国家〉という組織は、公式テレグラム・チャンネルの枠を超えてはるかに大きく広がっている――最近になってポツニャコフは公式チャンネルの管理には関わっていないと述べたとはいえ。ポツニャコフが2017年に始めた個人チャンネルは、彼が創設した〈男の国家〉よりもさらに人気だ。

ポツニャコフの個人チャンネルの登録者は、2021年1月時点の約8万2000人から、とてもゆっくりと――2021年7月時点でまだ8万3000人しかいなかった――増えていき、〈男の国家〉がもっとも話題になったハラスメント運動のいくつかを進めていた最中の2021年8月に急増した。

AppleとGoogleがポツニャコフのテレグラム・チャンネルを使用禁止にする、つまりApp StoreやGoogle Play Storeでダウンロードしたアプリではこのチャンネルにアクセスできなくなるという連絡を受けて、〈男の国家〉メイン・チャンネルと同様に、ポツニャコフも個人チャンネルを10万人近い登録者だけが見られるプライベート・チャンネルにした。2021年10月に、ポツニャコフの個人チャンネルはそれらのアプリではアクセスできなくなった。

2021年1月から10月までのポツニャコフの個人チャンネル登録者数(telemetr.ioより)。2021年10月、AppleのApp StoreおよびGoogle Play Storeでダウンロードしたアプリでは、このチャンネルにアクセスできなくなった。

同月、ポツニャコフは個人チャンネル登録者を予備の別のチャンネルに誘導した。10月半ばには、この予備チャンネルが新しい彼個人のメイン・チャンネルとなり、登録者は6万3000人を超えた。ポツニャコフはさらにまた別の予備チャンネルを開設し、その予備チャンネルも一日で1万7000人以上が登録した。

しかし、ポツニャコフが以前に使っていた個人チャンネルも、AppleやGoogleの運営ではないオンラインストアでダウンロードしたアプリでは引き続きアクセス可能だ。そのためポツニャコフは、元のチャンネルにアクセス可能なアプリのダウンロード方法を説明する投稿をした。この元のチャンネルを拠点に近々「襲撃」を開始する、とも表明した。

ポツニャコフのもうひとつのメイン・チャンネルは、名前を「ブトゥイルカ」(瓶)という。ロシアのインターネット・スラングに由来する名だ。ポツニャコフの関連チャンネルのひとつとして喧伝されているこのチャンネルは、ネオナチの符丁としてよく知られる数字を含む「butylka1488」という文字列をIDに使っている。チャンネルは2020年7月に開設され、2021年1月に約4万5000人だった登録者は、7月と8月に急増し――〈男の国家〉の他の関連チャンネルと同じ動きだ――2021年10月に6万人でピークに達した。(訳注:「ブトゥイルカ」は記事発表後、「butylka1488」から「shvabra_otb_1」というIDのアカウントに移って活動を続けている)

10月18日の判決の後、ウラジスラフ・ポツニャコフが個人チャンネルに投稿した文章。最後にある「驚き」という意味の言葉は、大文字だけを読むと反ユダヤ主義の中傷となる。

ポツニャコフおよび〈男の国家〉とつながっている別の小さなテレグラム・チャンネルに、「NAP」というものもある。「国家主義と父権制(ナショナリズム・アンド・ペイトリアーキー)」の頭文字をとった名前だ。2020年10月に開設され、2021年10月時点ではチャンネル登録者9100人。ポツニャコフはフィットネスに特化した個人チャンネルも運営しており、2021年10月時点で約3万2000人のチャンネル登録者がいる。

これらのさまざまなテレグラム・チャンネルを読み進めると、ロシア語のインターネット世界のもっとも暗い奥底に下りていくような心地がする。次から次へと攻撃的な投稿が目に入る――女性に対するもの、LGBTに対するもの、マイノリティに対するもの、誰であれグループの敵だと見なされた人に対するもの。メンバーは、白人でないと見なした者すべてに対して人種差別的な言葉を用いたヘイトスピーチを行う。コーカサス地方や中央アジアの出身者も、アフリカにルーツを持つ人々と並んで、特に悪意に満ちた中傷の対象となる。〈男の国家〉は「スラヴ人の団結」を謳うが、ウクライナ人でさえ憎悪を向けられている。チャンネルやチャットには、あからさまな反ユダヤ主義の投稿やメッセージも多い。

そうはいっても、2021年9月から10月にかけて、テレグラムにおける〈男の国家〉の活動からは、グループの行く末を心配していること、過激派と認定されると予期していたかもしれないことが読み取れる。前に触れたように、2021年10月、ポツニャコフが以前は全体公開していたチャンネルをプライベートに設定し、チャンネル登録者に予備チャンネルに向かうよう呼びかけたのと同時に、〈男の国家〉はテレグラムの過去の投稿を削除しはじめた。

すでに削除された〈男の国家〉テレグラム・チャンネルの2021年10月の投稿では、チャンネル登録者に向けて、「ブロックされる可能性が高い」、そしてチャンネルの名前とプロフィール画像は近々変わるものの「内容は変わらない」という呼びかけがなされた。ポツニャコフ自身さえもが〈男の国家〉と距離を置こうと試みており、この1年以上グループの指揮を執ってはいないと言っている。とはいえ、ポツニャコフは2021年10月に支持者に向けて「この1カ月は襲撃の件をスローダウンすべきだ、そうしたら注目も少しは減るだろう」と投稿し、同時にグループの財政的基盤を見つけると誓っている。

テレグラムのCEOパーベル・ドゥロフは、2021年9月の時点でも、法的な根拠が明確ではないとして、ポツニャコフのチャンネルに対する処分を拒否している。しかしながら、ドゥロフはその数週間前に複数のテレグラム・ボットを使用禁止にしている。そのなかには、投獄された反体制派の政治家アレクセイ・ナワリヌイの活動団体が使用する「Smart Voting」ボットも含まれる。これに関してドゥロフは、AppleやGoogleに強制されたようなものだと主張している。その少し前、AppleとGoogleはロシア政府の要求に応じて「Smart Voting」アプリをストアから削除し、議論を呼んだ

先述した3つのチャンネル――〈男の国家〉のメイン・チャンネル、ポツニャコフの個人チャンネル、そして「ブトゥイルカ」――はすべて10月18日の判決をうけてロシア国内で名前を公表され、活動禁止処分を受けた。しかし、本記事の発表時点では、これらのチャンネルはまだテレグラムでアクセス可能だ。

テレグラム社はベリングキャットのEメールによるコメントの要望に応えていない。

オンラインでもオフラインでも、世界はひとつ

暴力をふるうという〈男の国家〉メンバーからの脅迫は、口だけではない。2020年8月、女性ブロガーが道で男に襲われ、顔を殴られた。「わいせつな動画」を投稿したから自業自得だと男は言った。後にポツニャコフは、犯人は自分のテレグラム・チャンネルの登録者だとコメントした。

ロシアの人気寿司チェーン、ヨウビドヨウビが2021年8月に黒人モデルが登場する広告を出した際、ポツニャコフは支持者に行動をとるよう強く促した。彼は反ユダヤ主義的なヘイト・シンボルである「エコー」(三重の丸カッコ)を用いて同社とその「考えなし」に言及し、嘘の注文を入れるなどして攻撃するよう勧め、さらに謝罪して広告を取り下げるようヨウビドヨウビに求めた。ポツニャコフが同社オーナーや広告に出たモデルたちのSNSアカウント情報を投稿すると、すぐに彼らに対する脅迫が相次いだ。公式ホームページもハッキング被害にあった。じきにヨウビドヨウビは折れて、広告により「世間に不快感を与えた」と謝罪した。

〈男の国家〉は次に、ヨウビドヨウビを支持すると表明した別の寿司チェーン、タヌキに目を向けた。矢継ぎ早のハラスメント、脅迫、公式ホームページへの攻撃に加え、モスクワにあるタヌキの店舗を爆破するという脅迫まであった――この爆破予告からはポツニャコフは距離を置こうとしていたが。しかしタヌキは屈することなく、「異なる宗教、国籍、人種、指向の代表者たち」はひきつづき同社の広告に登場する、とインスタグラムに投稿した。

ロシアでもっとも有名な女性ミュージシャンのひとりであるアリョーナ・シュヴェッツも、ポツニャコフと〈男の国家〉の集中砲火を浴びた。2021年6月、シュヴェッツの曲に「LGBTプロパガンダ」があると主張したポツニャコフは、ロシア内務省の過激派担当部署にシュヴェッツを通報するよう支持者を煽った――これは先述の、活動家に〈男の国家〉と協力関係にあると非難された部署である。ポツニャコフは、ロシア南部の都市アストラハンで開催予定だったシュヴェッツのコンサートを中止に追い込めないかやってみろと支持者に指示した。彼らは成功した。

2021年9月11日、ポツニャコフおよび〈男の国家〉と関係するチャンネル「ブトゥイルカ」の投稿。黒人男性と一緒にテイクアウト・レストランにいたロシア人女性をチャンネル登録者が詰問する様子を映した動画がアップされている。人種差別的およびミソジニー的な罵倒に満ちたこの投稿は、「こんなに混雑した場所で」さえ行動するとは、と登録者に対する賞賛で終わる。しかし、こういう場合にはもう少し汚い言葉遣いを抑えたほうが、通行人に真面目に受け取ってもらえるだろうともアドバイスしている。

シュヴェッツ以外にも、〈男の国家〉によってハラスメントを受け、いじめられ、脅迫されたというロシア人女性の証言は多数ある。2020年、ポツニャコフと仲間たちによって標的にされた女性の数人が、ロシアのジャーナリストに経験を語った

「最初は気にしませんでした」とひとりの女性は匿名を条件に、ワンダージンのアントン・ダニロフに語った。「でもそのあとに、ポツニャコフはチャンネル登録者に、オンラインだけでなく、現実の世界でも標的を探し出すよう勧めていると知り、怖くなりました。ポツニャコフを喜ばせるためならどこまで彼らが行動できるのか、わからなくて怖い」

〈男の国家〉や類似のグループによるハラスメントの被害者が経験することは、「単なるオンラインだけのもの」と軽視してはいけない、と専門家は警告する。「オンラインのハラスメントがオフラインに流れ出すとき、自動的に起動する停止装置のようなものはありません」と、ウィルソン・センターでロシアおよび東欧を専門とするグローバルフェローで、オンラインにおけるミソジニーについての著書を準備中のニーナ・ジャンコウィッツは、ベリングキャットにこう語る。

「オンラインのハラスメントや攻撃は、女性をオフラインにとどめ、公的な言論に参加することを妨げようとする意図があります」

〈男の国家〉と関連するテレグラム・チャンネルには、過去のミソジニー的テロ行為に言及する投稿も複数ある。

「書き間違いがあっても許してほしい、これを書くのに15分しかなかった」という言葉で、2020年6月にポツニャコフのチャンネルに投稿された文章は始まる。

「私は自分自身を、極端な行動をとらざるをえないよう追い込まれた理性的な博識者だと考えている」とその数段落後に書いてある。「政府を喜ばせるためだけに存在しつづけようと努める意味があるだろうか?(中略)フェミニストはいつも私を激怒させた(中略)。あいつらは本当にご都合主義的で、長年男たちが蓄積してきた知識からちゃっかり利益をかすめとっている。チャンスがあればいつだって自分の姿を違うふうに見せようとする」

この文章は、ポツニャコフが最後に軽く触れているように、世界のもっとも悪名高いミソジニー・テロ事件の犯人の遺書の翻訳だ。1989年、カナダのモントリオール理工科大学で起きた虐殺事件である。憎悪に満ちた若い男が女性だけを標的にして14人を殺害した事件だ。犯人は虐殺行為のさなかに、自分は「フェミニズムと闘っている」と主張した。

モントリオール理工科大学虐殺事件の犯人の声明文の部分的翻訳の後に続けられたポツニャコフの後記。事件を称賛も非難もせず、この文章を投稿した意図も説明していない。

研究によると、ミソジニー的な態度を持つ人間は、暴力的な過激派を支持する傾向にある。ミソジニストが抱く憎悪、特に「インセル」(「不本意な独身者」を意味するインボランタリー・セリベイトの略)と呼ばれる、自分の社会的成功の不足および性的満足感の欠如は女性のせいだと考えるミソジニストが抱く憎悪は、近年の暴力的な攻撃事件のいくつかの動機になっている。6名が犠牲になった2014年のアイラビスタ銃乱射事件。10名が命を奪われた2018年のカナダ、トロントのバン暴走事件。5名が殺された2021年8月のイギリス、プリマスの銃乱射事件。ミソジニストの憎悪が、数々の暴力事件およびテロ事件の中心にある。

ポツニャコフがこの種の暴力をふるうよう露骨に呼びかけたことはないようだ――とはいえ、上記にあげた例からわかるように、彼は嬉々としてこれらの事件をほのめかす。ポツニャコフの投稿のなかには、「仕事にとりかかろう、兄弟たち」という曖昧なフレーズで締めくくられたものがある。ポツニャコフの個人チャンネルで、支持者に攻撃してほしい人物の連絡先や詳細をシェアした後にこのフレーズが添えられたケースを、ベリングキャットは70件近く特定した。

このフレーズは、もともとは抗議活動を暴力的に鎮圧するロシアの機動隊に対する支持の表明としてロシアのインターネット文化で使われはじめたものだ。ニュース局RTのシモニャンやスタヴロポリ地方のウラジーミル・ウラジミロフ知事といった親政府の有名人もこのフレーズを用いたことがある。

2021年8月、ヨウビドヨウビに対する攻撃を促す投稿の最後に、ポツニャコフは「仕事にとりかかろう、みんな! 最後までやろう!」と書いている。

さらに、さきほど触れたプリマスの銃乱射事件に反応した2021年8月の投稿で、ポツニャコフはインセルによるテロリズムが増加すると予測し、共感に満ちた説明を提供している。

「インセルのテロリズムは勢いを増していくばかりだろう」とポツニャコフは書き、ロシアでも近い未来に同様の攻撃が必ず起きると論じている。これについて彼は、フェミニズムおよび白人の異性愛者男性を「抑圧」する左翼的政策に責任があるとし、さらには低下したテストステロン値および彼が「女性器資本主義と母権制」と呼ぶものにまで罪を着せている。

インセル・テロリズムは「勢いを増していくばかり」とポツニャコフが述べる2021年8月14日の投稿の冒頭部分のスクリーンショット。

未来

〈男の国家〉のようなグループはロシアだけのものではない。2021年初頭、北マケドニアとセルビアにあった類似のオンライン・グループが、写真や個人情報をさらされた多数の女性がハラスメントと攻撃の被害にあった後に閉鎖処分を受けた。旧ユーゴスラビア地域に約3万6000人のメンバーがいるというテレグラムの別のグループも2021年3月に閉鎖された。

ポツニャコフは、自分は〈男の国家〉とはもう関係がないと主張するものの、いまだに活動のリーダーと見なされている。ロシアのメディアはポツニャコフがポーランドやドイツを拠点にしていると言い、2021年8月には、キプロス島の北部を占める、事実上は独立しているもののトルコにしか国家と認められていない国、北キプロスにいると報道した。

とはいえ、ポツニャコフはこれまで所在地についてためらいなく嘘をついてきた。2021年9月にはアゼルバイジャンとの国境で逮捕されたと主張し、数日後まったくの嘘だったと明かした。2020年6月には自分の死さえ偽装し、後に売名行為の一環だったと認めた。

ポツニャコフにはベリングキャットと話す気はない。「そんな質問をするんだったら失せろ」。ベリングキャットがテレグラム経由で短い質問票を送ったところ、ポツニャコフは10分足らずでこう返信した。2020年にモントリオール理工科大学虐殺事件の犯人に関する投稿をしたことについて質問されて、〈男の国家〉創設者は腹を立てたのだ。

「組織の活動を禁止するといっても、組織それ自体が存在しない場合はどうすればいいのか? 閉鎖できる事務所も、銀行口座もないとしたら?」とSOVAセンター所長のベルコフスキーは問いかけるものの、ロシアの厳格な過激活動対策法のもとでは、〈男の国家〉メンバーは告発を恐れて活動から手を引くだろうと考えている。

しかし、グループの信念は今後も生きつづける、と彼は警告する。

「〈男の国家〉はおそらくゆっくりと死んでいくでしょう。でも、その考え方は人気を得ているし、考え方を広めるにあたって効果的だと実証された方法もわかっています」とベルコフスキーは続ける。「テレグラム・チャンネルを開設するのなんて簡単です、誰にだってできる。ポツニャコフでなくても」

取材・執筆 ベリングキャット差別監視プロジェクト

Bellingcat 2021年10月20日
Meet the Male State: Russia’s Nastiest Online Hate Group

翻訳=谷川真弓

※冒頭サムネイルのPhotoはGetty Imageより


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!