【スクープ】「霊友会」を隠して若者イベントをお手盛りで報じる毎日新聞と「新興宗教マネー」の関係
取材・執筆 フロントラインプレス
新興宗教「霊友会」が全面的にバップアップして毎年開催されている中学・高校生向けのイベント「ナキワラ!」について、毎日新聞が長年、霊友会の存在を隠して通常のニュースとして報道を継続していることがわかった。
毎日新聞社は、このイベントのPR記事の制作・掲載も手掛けて多額の広告掲載料を受け取っているが、これとは別に各都道府県版や全国版社会面にも通常のニュースとして多くの記事が掲載されている。
新興宗教団体が教団の名称を出さずにイベントを開催し、参加者を集めることは世界平和統一家庭連合(旧統一協会)をめぐる問題で批判されてきた。毎日新聞社は、旧統一教会の関連団体と政治家の関係を紙面で厳しく批判する一方で、自らは新興宗教マネーとの関係を断たなかった疑いがある。
日本有数の信者数を誇る「霊友会」
霊友会の公式ウェブサイトによると、同会は法華経の研究と修行を重ねた久保角太郎が1930(昭和5)年に創立した。2022年末現在、会員(信者数)は253万人を超え、海外も含め5531の支部を持つ。新興宗教としては、創価学会や立正佼成会などと同様、日本有数の規模を誇る。「いんなあ・とりっぷの霊友会」というキャッチフレーズをどこかで耳にしたことがあるかもしれない。
この霊友会と関係の深いNPO法人「ニューライフ・アドベンチャー運動実行委員会」(以下、NLA委員会)、および霊友会の外郭団体「インナートリップ青少年センター」が主催するイベントが「ナキワラ!」だ。
主導するのはNLA委員会だが、出演者はみな中学・高校生。イベントの公式資料によると、「主張」「音楽」「パフォーマンス」「ショートムービー」の4部門があり、出演者の参加費、ライブの入場料はいずれも無料。全国各地のイベントを運営するスタッフも中学生や高校生を中心に組織されているという。
出演者は人間関係の悩みや将来の夢などを「主張」としてステージで訴える。あるいは、バンド演奏やダンスパフォーマンスを披露する生徒もいる。催し全体を“ライブイベント”と称するのは、出し物がまさに“ライブ”だからだ。
毎年夏に都道府県大会、その後に地区大会が開催され、会場も収容規模300人前後のライブ会場が主に使用される。高い評価を得た出演者は12月に開催される全国大会(近年は名古屋)に出場できる仕組みだ。
中高生対象のイベント「ナキワラ!」には莫大な運営費用が
全国的なイベントであるだけに、運営にかかる費用も莫大だ。
NLA委員会の事業報告書によると、コロナ禍の影響が残っていた2022年度のナキワラ!は、地区選考会が9カ所、全国大会が1カ所。そのほかに47都道府県でオンラインイベントが開催され、事業費として約2676万円が支出された。コロナ禍より前の開催は、2017年が約5762万円、2018年が約5413万円、2019年が約5023万円。小さな額ではない。
気になるのは、その収入源だ。中学・高校生がこれほど巨額資金を集めることができるのだろうか。
ナキワラ!の取材経験を持つ毎日新聞記者はこう話す。
「NLA委員会の運営資金は霊友会からの寄付で成り立っています。これだけの大規模なイベントを、10代の若者だけで毎年運営することは容易ではありません。表向きは若者がすべてやっていることになっていますが、実際は霊友会の信者がサポートしています」
ナキワラ!主催団体と霊友会の関係は
再び事業報告書を見てみよう。
NLA委員会の2022年度の収入は、約7005万円だった。そのうち7000万円が寄付で賄われている。寄付者の詳細は明らかにされていないが、そのほとんどを霊友会が拠出していると思われる(寄付総額について霊友会は「回答は差し控えさせていただきます」と回答)。
運営面でも霊友会のサポートは手厚い。全国に8つの事務所を持つNLA委員会の事務所のすべては、霊友会の関連団体である「インナートリップ青少年センター」の施設内にある。運営面のアドバイスも、霊友会の現役信者が担当していると関係者は言う。ナキワラ!は、霊友会の存在なしには開催できないイベントなのだ。
では、主催団体のNLA委員会と霊友会は、どのような関係にあるのだろうか。
ニューライフ・アドベンチャー(NLA) は、霊友会青年部の学生信者が1977年に発足させた運動だ。霊友会のホームページによると、「学生の間にはびこる『無気力・無関心、無感動』を打破しよう」と考えた霊友会の若手信者が、全国で「高校生の主張コンクール」を開催したのが始まりだった。
その後は「主張」と、もう一つの運動「NLA全国高校生音楽祭」を展開。2004年にこの2つを統合してナキワラ!が誕生した。ナキワラ!は、全国の若者同士がつながりを深め、「新しい自分」に出会うことを重視しているという。これは、霊友会の教団の運営方針と合致しており、ナキワラ!は若手信者が霊友会の教えを実践するための活動の場となっている。
こうした歴史は霊友会のホームページに記され、「霊友会はニューライフ・アドベンチャー(NLA)運動を支援しています」とうたわれている。さらに、霊友会の広報誌「明法」もナキワラ!の様子を大きく掲載。2023年の開催も同年の10月号などで手厚く伝えた。
「霊友会」の名前を隠した経緯は
ただし、「ナキワラ!」に出演した中学・高校生や入場した保護者、友人らの多くは、このイベントと霊友会の関係を知らないかもしれない。なぜなら、これほど関係が深いにもかかわらず、イベントを通じて「霊友会」の存在は表に出てこないからだ。
もちろん、インターネットで検索するだけで、ナキワラ!と霊友会とNLA委員会という三者の関係はすぐにわかる。実際、ナキワラ!を事実上主催しているのは霊友会であることを知ったという参加者が「実体を隠しながら高校生を集めていた」と批判したり、保護者が子どもの参加を禁じたりしたという体験談なども散見される。
宗教の普及活動は、それだけでは何ら批判されるべきものではないが、気になるのは霊友会の名称をなぜ表に出さないのか、という点だ。その理由を主催のNLA委員会に尋ねると、こんな回答が返ってきた。
〈30年以上前になりますが、「ナキワラ!」前身の「全国高校生の主張コンクール」を全国展開するに当たり、当時のマスコミ各社から霊友会の名前を出さず、霊友会の手を離れてNLA運動を社会的な運動として推進した方がいいとの提案があった〉
霊友会の名称を表に出さず、隠すよう進言したのは、マスコミだったというのだ。驚きではないか。しかも、マスコミとの深い関係は、今も続いている。フロントラインプレスは、それを示す毎日新聞社の内部文書を入手した。
特定の宗教団体がバックアップするイベントに便宜を図り、一般のニュースとして報道するよう指示した驚くべき文書である。
現在配信中のスローニュースの続報では、ナキワラ!を一般のニュースとして報じるよう現場記者に指示する毎日新聞社の社内文書を公開している。
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