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中国での危険な現地ルポが凄いと思っていたら、テクノロジーを駆使したFTの圧倒的データ報道に驚嘆させられた

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

きょうのおすすめはこちら。

加速する「宗教の中国化」 イスラム教徒の街で相次いだ不可解な出来事

中国ではいま、イスラム教のモスクが中国風の建物に改造されるケースが相次いでいるそうです。背景にあるのは信仰より共産党の指導を優先させる「宗教の中国化」なのだとか。

西日本新聞の坂本信博特派員(当時)が、現地で取材した状況を2022年10月にリポートしています。

その坂本記者、実は西寧を取材した際、非常に奇妙な状況に直面しました。乗っていたタクシーが特殊警察に囲まれ、「運転手が強盗犯」だと告げられます。しかし男は逮捕もされず、坂本さんは連れていかれた警察署で「北京に帰ったほうがいい」と促されます。

警察署が手配した別のタクシーは、道を何度も間違えるうえノロノロ運転。手配した現地ガイドには「友人」を名乗る人物がついてきて、明らかに監視しているような様子。まるでドラマのようなシュールさです。その一部始終は以下のリンクから無料で読むことができます。

後になんとか当局の目をかわして西寧で取材したところ、少なくとも10カ所がアラブ風のドームや尖塔を撤去する工事中で、かなりの徹底ぶりだったとか。

身の危険すら感じる取材によって、なんとかリポートすることができたといいます。

How China is tearing down Islam(中国はいかにしてイスラム教を崩壊させようとしているのか)

一方、イギリスのフィナンシャルタイムズは、同じテーマを全く違う手法で取り上げました

衛星画像を駆使して中国全土を調査し、4450施設のデータベースを構築。この中からイスラム建築が特徴的だった2312のモスクを分析したところ、4分の3が2018年以降に改変または破壊されたことを明らかにしています。

How China is tearing down Islamより

サイトはスクロールしていくとモスクの改造前と後の画像が変化していくのが視覚的に分かるスクローリーテリングの手法で表現され、極めて見やすくしかも軽い作りになっています。

How China is tearing down Islamより

衛星画像だけでなく、中国の公文書も調査に利用。地方政府の調達文書からは、モスクを具体的にどのように中国風に改造し、その理由なども示されていました。

How China is tearing down Islamより

圧倒的な物量の分析と優れた表現に驚嘆させられます。坂本記者も「これは、やられた!!!のひとことです」と感心しきりでした。

このコンテンツは、世界の優れたデータジャーナリズムを選ぶ「Sigma Awards 2024」の10作品の一つに選ばれました。

現地での取材はもちろん重要。一方で、現代のテクノロジーを駆使すれば、それだけでは見えないものも明らかにでき、大きな成果を得られると改めて思い知らされるコンテンツでした。(熊)

(西日本新聞 2022/9/27、10/21)
(Financial Times 2023/11/27)