内部告発の行方はどうなる? 兵庫県が信金への補助金を増額してキックバックさせた疑惑で、サンテレビが新たな文書を入手
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兵庫県元副知事が補助金増額を指示した県職員メモ 阪神・オリックスの優勝パレードの約1週間前
亡くなった兵庫県の元局長、渡瀬康英さんによる「内部告発」。その行方はどうなるのでしょうか。
注目が集まる中、地元のサンテレビが疑惑が深まる新たな文書を入手しました。
それを紹介する前に、そもそもどういう疑惑なのかを説明しましょう。ニュースサイト「HUNTER」には、この告発文の全文が掲載されています。
告発は7項目にわたり、そのうちの6番目が今回、サンテレビが取り上げたものです。その内容をかいつまんで紹介すると、
阪神・オリックスの優勝パレードは県費をかけずにやるはずだった
ところが寄付が集まらず、必要額を大幅に下回った
そこで信用金庫への補助金を増額し、募金としてキックバックさせることで補った
司令塔は副知事
担当課長は不正行為と調整で精神がもたず休養中
これまで斎藤知事と、司令塔と名指しされた片山元副知事は、会見でキックバックを否定。担当課長は今年4月に亡くなりました。
この疑惑について、サンテレビは実際にそういう問題が起きていたのかどうか、解明するために2023年12月の補正予算についての資料を入手しました。
複雑な話で記事をさっと読んでもわかりにくいので、この新たな公文書から見えてくるポイントを説明すると、こういうことです。
副知事は会見で「信用金庫への補助金は前期比50%減少となっております」と、増額ではないような発言をしている。確かに8億円から4億円に減っているが、実は当初の補助金は予算上は1億円だった
財務課長の査定資料には、11月14日時点で1億円と記されている
ところが2日後の16日に、3億7500万円に差し替わっていた
元副知事が4億円程度に増額するよう口頭で指示したことを示す職員のメモが存在
さらに21日の知事査定で、丸い数字にするため4億円で計上するよう知事から指示があったことを示す職員のメモも存在
信用金庫からの寄付は17日~30日に行われ、増額された後になっていた
このような疑惑をより深く感じさせる内容です。14日~16日の間に補助金の増額を指示したとみられる元副知事は、取材に回答をしていません。
兵庫県は今回の内部告発の対応を、当初から大きく誤ってきました。(それについて詳しくはこちらの記事を)
今後、県議会の百条委員会などでも疑惑についての追及が行われると思いますが、上智大の奥山俊宏教授は、次のように釘を刺しています。
「何よりも大切なのは、百条委員会に参加する県議会議員が、だれの有利になろうが不利になろうが、事実関係の解明に徹する独立の位置に身を置くべきだ、ということだ。所属する党派の打算など私利を持ち込むのは恥ずべきことだと心得なければならない」
(熊)
※サムネイルの画像は兵庫県庁とサンテレビのHPより