ふるさと納税で潤った市町村、実はもらいすぎて使い道に困り、有効活用できてなかった不都合な事実が発覚
あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。
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ふるさと納税の1人あたり受け入れ額で上位50自治体、積み立て残高が4年間で倍増…和歌山・北山村は税収20年分に
年末が近づき、そろそろ「ふるさと納税しようかな、どこの自治体を選ぼうか」なんて考えている方もいるかもしれません。
ふるさと納税による去年の住民税などの控除額は過去最高を記録し、大都市では税金の「流出」に頭を抱える自治体も出ているという報道もありました。予算が足りなくなり、小学校の改築工事が延期になるケースまで。
そんな中、読売新聞による驚きの調査報道が飛び込んできました。
ふるさと納税で潤っている自治体で、基金の積み立て残高が倍増しているというのです。
せっかく多額の寄付金収入があったのに、使い道を決められていないというのです。中には20年分以上の税収に当たる金額を積み立てている自治体も見られました。
有効活用できない自治体に問題があるのか、制度自体に見直す点があるのか、これは由々しき状況ではないでしょうか。
実はこの問題、気づける方法があるのです。自治体が毎年度出している「主要な施策の成果報告書」(自治体によって名前が少し違うところもあります)という資料に、実施した事業ごとの評価が書かれているんですよね。
それでふるさと納税に関する事業を見ると、いくらの予算を支出していくらの寄付があったか、それをどのように使っているのかなどを詳述している自治体があったのです。(この資料、自治体によってしっかり書いているところと、雑な作り方しかしていないところがあるので、その点も少々問題なのですが)
それを読み込んだところ、多額の寄付金を使いきれず、基金として積み立てているところが見られました。そこで、メディア各社や勉強会で開いているオープンデータ講座で、先月あたりから「この基金、いずれ問題になりそうなので、調べた方がいいですよ」とお伝えしていたところでして。
今月3日の「報道実務家フォーラムin関西」でもこの話をしたところ、読売新聞のデスクの方から、「実はうちもこの話、気づいて取材していたんです」と、6日の報道になったわけです。さすがですねー。
ただ、この記事、まだ総論的に書いている状態ですので、個別の自治体を掘っていくと、それぞれおかしな事情が見えてくるのではないでしょうか。全国のメディア関係者の皆さん、ぜひ深掘り取材を。(熊)
(テレビ朝日 2023/1/30)
(読売新聞 2023/11/6)