反省どころか前回開示情報も塗りつぶしてきた厚生労働省の恥知らずな「情報非公開」
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浮島丸事件-新たに10件の乗船者名簿が開示。しかし前回開示された情報も「外務省との調整」で不開示に。
情報公開では後ろ向きの日本政府ですが、さすがにこの対応には驚き、呆れました。
戦争終結直後の1945年8月24日に京都府の舞鶴港で日本海軍の輸送船「浮島丸」が爆発、沈没し、乗船していた朝鮮人3735人でうち524人が死亡した浮島丸事件。戦後、日本政府が「ない」と言い続けてきた乗船者名簿が実は存在していたことをジャーナリストの布施祐二さんと共同通信がスクープしたことを、先日、SlowNewsでも紹介しました。
これまで名簿の存在を否定してきた厚生労働省は、さすがに反省をして、その姿勢を改めるのかと思っていたら、まったく逆でした。
布施さんたちの情報公開請求に対し、今回、あらたに厚生労働省が開示してきた資料は個人情報だけではなく、前回は開示していた集計人数や名簿の作成業者まで塗りつぶし、非開示としてきたのです。
一連のやりとりについては、布施さんがnoteに書いていますが、情報公開に逆行する姿勢には驚きます。
前回、開示をした部分まで不開示にしたのはなぜか。それについて厚生労働省はこう答えたのです。
「外務省と調整した結果、開示基準を厳しくしました。政府で把握していない数字を開示した場合、説明しなければならないので、取り扱いを慎重にすることにしたのです」
これは明らかに本末転倒です。
敗戦後の混乱の中にも、後世のために記録を残そうと奮闘した当時の名もなき官吏たちに、彼らが残した貴重な資料を簡単に闇に葬ろうとする厚生労働省の官僚は合わせる顔があるのでしょうか。
怒りを通り越して、ため息しか出ません(瀬)