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14億円横領、お互いに騙されたと証言しても夫婦は離婚していなかった!「アニータ事件」チリまで追いかけた『真相』

「アニータ」と聞いてピンとくる人は少なくないのではないでしょうか。

 23年前に発覚した「アニータ事件」は、テレビや週刊誌を席巻しました。当時、青森県住宅供給公社の経理担当だった千田郁司さんが、公社から14億円を横領していた事件です。

理事長印を悪用して、公社の銀行口座から現金を引き出すという大胆な手口で公社の資産100億円のうち、14億円を私的に流用。その大半をチリ人妻のアニータ・アルバラードさんに送っていました。

なぜそんなことが可能だったのか。いま彼らはどうしてるか。お金はその後どうなったのかーー朝日新聞の坂本泰紀記者が、千田さんへの長時間のインタビューやチリでの取材を刊行し、事件の真相から顛末までに迫っています。

千田さんは逮捕されたあと、すでに刑期を終え、アニータさんは「横領したカネだと知らなかった」と証言したまま母国に帰国。お互いに「騙された」と主張しながら、連絡もなく別れ別れに生活していますが、実は戸籍上は夫婦のままです。

いま職探し中という千田さんは、最近では大谷翔平選手の専属通訳を務めた水原一平氏の事件に強い関心を覚えて、坂本記者にこう自嘲したといいます。

 「水原さんは詐欺で、俺は横領だけど、信用や信頼を武器にして、他人の金を盗んだのは似ているよね。あと、彼は大谷さん、俺はアニータ。相手方が有名だったからマスコミに追っかけられた点も共通性があるよね」

千田さんは、当時、「アニータへの送金の最大の名目は、チリでの病院建設のためだった」と証言していました。その病院はどうなっているのか。チリで取材すると、それらしき医療施設が出来ていたことがわかります。しかし、その後はどうなったのか。そして、坂本記者はいまもチリではテレビスターともいわれるアニータさんに会えたのか。

その顛末は記事を読んでもらうとして、支局に届いた手紙からはじまる千田さんへの長時間の向かい合い、チリ現地への出張など時間もコストをかけた取り組みなど、新聞社の良さが十二分にいかされた連載です(瀬)