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災害前線報道ハンドブック【第3章】検証フェイズ⑦施設の損壊の「本当の原因」を検証する

スローニュース 熊田安伸

前回、第4章の復興フェイズに移るとお伝えしましたが、検証フェイズでまだやるべき話が残っていました。地震や津波で被災した施設や建造物がなぜ壊れたのか、その「本当の原因」を調べることも重要です。今回も実例をもとに解説します。


なぜ地震のたびに天井は落下するのか

災害で被災した施設は、なぜ壊れたのか。いやいや、あれだけ大きな揺れや津波に襲われたら被害を受けて当然、などと思っていないでしょうか。しかしそこで思考停止に陥ってしまうと、本当に検証すべき大切なことを見落とす可能性があります。

2005年の8月16日、宮城県沖で震度6弱の地震が発生し、仙台市の屋内プールの天井が落下して26人がけがをしました。

国土交通省の事故調査報告は、「施工計画書において斜めの振れ止めが要求されていたにもかかわらず求められていた仕様どおりの施工が行われていなかった。また、工事監理においても、斜めの振れ止めが設置されているかどうかチェックしておらず、建築士の工事監理が適切に行われなかったものと考えられる」と指摘しました。そのためか、当初の報道では「業者によるずさんな施工」という部分に焦点が当てられました。

国土交通省の事故調査報告より

このニュースを見たNHK新潟放送局の記者は、これは果たして業者の属人的な問題なのかと違和感を覚えたといいます。

というのも、宮城県での天井落下の前の年に発生した新潟県中越地震の際、長岡市で最大の避難所だった体育館で天井が落下して、使い物にならなくなったことを聞いていたからです。(この連載の第2章「避難フェイス」でも登場したエピソードです)

実は落下した天井と同じような施工が全国各地で行われている――そのことを業界関係者から聞きつけた記者は、独自に調査を開始します。

ここから先は会員限定です。大災害の際、当初は全く注目されていなかったことが、その後になって問題が明らかになるケースは数多くあります。注目すべきポイントとは。

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