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エビデンスをもとに『効果が低いのに行われている医療』をリストアップする研究

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LVC研究を宮脇先生にインタビューしてみた!

「LVC研究」とは耳慣れない言葉ですが、「効果の低い医療 (low value care)のリスト作成とその医療費に与える影響に関する研究」です。

医療の中で価値がない、つまり患者に提供してもほとんど役に立たない治療をつきとめ、それをリストアップし、医療費への影響を調べる取り組みです。これに取り組んでいる東京大学大学院医学系研究科ヘルスサービスリサーチ講座・特任講師の宮脇敦士さんへのインタビューを、この研究をすすめる一般社団法人Data for Social Transformationのサイトが行っています。

実際に本当にほとんど効果がない治療があると聞いて驚きます。代表的なものとして、風邪のときに提供される抗生物質や、コデインというせき止めは風邪には効かないことがはっきりしています。

では、なぜそんな治療が行われているのか。

宮脇さんによれば、いろんな理由があり、たとえば昔は研究が十分になされてなかった等の理由によって、一度医療保険制度の中に収載、保険が効くようになってしまった治療が残っているケースなどがあるということです。

こうした無駄な治療であるLVCを、エビデンスを踏まえてリストアップしていくのがこの研究です。その結果、財政の苦しい中で患者が不利益を被ることなく医療費や医療リソースを減らすことができます。

最後に宮脇さんは、「エビデンス」とはなにかと聞かれてこう答えています。

究極的には「納得感」だと思います。民主主義を進めていく上で「納得感」が大事です。わたしたち国民ができるだけ納得することができれば、社会は動いていく。何かよくわからないで決まっているから不平不満が起きたり、それは適切ではないんじゃないかとか思われたり。
きちんと透明性を確保することが必要です。その透明性を確保しようとなると、基本的にはエビデンスが一番適したものになってくるのではないでしょうか。

納得感を得るためのエビデンスの重要性は、ジャーナリズムの信頼にも相通じるものでもあります(瀬)