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【スクープ】「監察が投書の内容を教えてくれた」 警察“カラ出張”への箝口令はどのように

取材・執筆 フロントラインプレス

【広島県警「カラ出張」④】
広島県福山市の警察署で繰り返されていたとされる「カラ出張」。2019年〜2020年にかけて、その渦の中にあり、上席の指示で「カラ」を続けた巡査部長は「このままでいいのか」と深く悩んだという。自分や同僚らの行為は詐欺や虚偽公文書作成などの罪に該当しかねないのに、上席らに具申しても事態は一向に改善されなかったからだ。警察官としての良心と、「黙ってろ」という上席らの“圧力”。その狭間で苦しみ続けた。

巡査部長は、最終的には2022年3月に広島県警本部へ事実を伝え、公益通報(内部告発)したが、そこに至るまでの約2年間、警察組織の内部で何が起きていたのか。フロントラインプレスが入手した関係書類や公文書、証言、メールの写しなどから見えてきたものとは――。

「カラ出張」の指示はどのように出されていたのか

「カラ出張」の舞台となったのは福山市内の警察署の警備課で、上席から「カラ」の指示が出始めたのは2019年5月ごろだった。

カラ出張が始まる前、「協力者」と接触して情報収集する捜査では、実際に接触する捜査員だけでなく、その確認役として別の捜査員も100キロ以上離れた接触現場に出向いていた。そして、離れた場所から接触を確認するなどし、現場から逐次、広島県警本部の担当部門に電話などで連絡する仕組みだった。この捜査では最低でも捜査員がペアになっていた。

ところが、新任の捜査員が着任して間もなく、「態勢を組む必要はない」という指示が出始める。「確認役」の捜査員が現地に行く必要はない、というのである。

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