小池百合子都知事の側近が「学歴詐称工作」を暴露…新聞は記者会見を報じているだけでいいのか
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「私は学歴詐称工作に加担してしまった」小池百合子都知事 元側近の爆弾告発
小池百合子都知事の「国立カイロ大学卒業」という学歴については、過去いろいろな形で疑念が示されてきました。
そして、今回、文藝春秋で元「都民ファーストの会」事務総長である小島敏郎弁護士が、「私は学歴詐称工作に加担してしまった」という手記を文藝春秋2024年5月号(4月10日発売)で発表しました。
2020年にもメディアや都議会で騒ぎになりましたが、そのときは小池都知事が卒業証書と卒業証明書を記者会見で公開。さらには、駐日エジプト大使館がSNSに、小池都知事の卒業を認めるカイロ大学の声明文が出したことで沈静化しました。
しかし今回、そのカイロ大学の声明について、小島氏がすすめた工作であり、実際に書いたのは日本人のジャーナリストだと告発したのです。」
これを受けて、小池都知事は会見で反論したのですが、小島氏に対策を依頼したのかどうかは明らかにしませんでした。やりとりは、このテレビ朝日の記事でわかります。
ちなみに、小池氏が示した卒業証書については、当時、作家の黒木亮さんが取材をしたうえで疑問を呈するなど、さまざまな議論が起きています。
今回の手記では卒業証書そのものの真贋ではなく、偽装工作が焦点になっています。
その点でもっとも気になるのは、声明を書いた「日本人ジャーナリストA氏」の存在です。今後A氏が実名で詳細を明かす、あるいは新たな証拠を示す、などということがあれば、事態は大きく動くかもしれません。
同じ文藝春秋5月号には、当時、カイロで小池さんと同居をしていた女性が実名で、著書では「カイロ大学首席卒業」というのは真っ赤なウソで、落第をして大学を去ったことを指摘しています。
一方で、新聞やテレビをふくめてほかのメディアからは、独自の新しい情報は出てきていません。いま報道されたものを見ている限り、記者会見で反論があったことを紹介するにとどまっています。
巨大な都庁のトップにくすぶる疑惑の真偽は重大な公的関心事です。もしカイロ大学に不正を頼んでいるというのが事実なら、安全保障上の問題でもあります。
新聞やテレビは独自の取材が難しいのであれば、せめて文春報道が真実かどうか、ファクトチェックはできないのでしょうか。特に海外にネットワークをもっているNHKや新聞社のような巨大メディアは、小さな雑誌メディアとは違う取材ができると期待したいですね。
記者会見を報じるだけではなく、取材の動きが進んでいると信じたいところです。(瀬)
文藝春秋2024年5月号