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奈良県の地域ウェブメディア「奈良の声」、従来のメディアでは伝え切れない問題こそ調査報道で発信し続ける

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

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「奈良の声」

奈良県の地域の問題をテーマにしたウェブメディアがあります。それが「奈良の声」。2010年にサイトがスタートし、調査報道など、独自のニュースに力点を置いているとか。

10月16日現在のサイトのトップ記事をを見てみると、香芝市政の問題を取り上げています。市長の3つの諮問機関について、市議会議長が設置を提案し、自ら会長に就任しているという報道。これでは、「二元代表制」の意味がなくなってしまうと訴えています。そんなことになっているとは、市民からはなかなか見えないのではないでしょうか。

このほかにも、従来型のメディアでは紙面や取材リソースの限界で載せられないような、自治体やそれぞれの議会に取材した記事を数多く掲載。この体制でよくできるものだと、舌を巻きます。

過去にも、県域水道一体化計画の財政シミュレーションで行った水道料金の試算に、ダムの老朽化による維持管理費などの費用がほとんど反映されていないとする、県民の暮らしに直結する調査報道などを次々と発信。

県内12市のホームページのうち、3市で生活保護制度の案内が掲載されていなかったことを報じると、すべての市のホームページで掲載され、未掲載は解消されました。

続報は力なり 元新聞記者が始めたローカルメディア、14年目の境地

この「奈良の声」を立ち上げたのが、奈良新聞の記者だった浅野善一さんです。朝日新聞が、14年目となる地域メディアの運営について、浅野さんにインタビューをしています。

「従来のメディアだけでは伝えきれない身近な問題がたくさん埋もれている。市民の声を聴き、一つの課題について丁寧な続報を出し続けることで行政は変わっていく」という浅野さん。

10年以上もこうしたメディアを続けられるというのは、地域のためにも実によいことだと思いますし、ああ、こんな記者人生を送る道もあるのだなあ、と、憧れる記者は多いのではないでしょうか。私もその一人です。

「メディアはローカルでこそ真価を発揮しやすい」とも言われますが、その実例となって続いてほしいと思います。(熊)

(奈良の声 2023/10/16)
(朝日新聞 2023/10/9)