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冤罪をめぐる調査報道、前の番組では届かなかった「経産省と検察庁はどう関わったのか」を明らかにした秀逸な続編

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

軍事転用が可能な精密機器を不正に輸出したとして横浜市にある大川原化工機の社長ら3人が逮捕され、約11か月も拘束された事件。公判直前になって、検察官が公訴取消をし、冤罪であることが明らかになりました。現役の警察官が法廷で「まあ、捏造ですね」証言をする異例の展開に。

なぜ、こんなひどい捜査が行われたのか。去年、放送されたNHKスペシャル『“冤罪”の深層~警視庁公安部で何が~』は、公安部の外事第一課第五係長に直当たりするなど、その真相に迫る調査報道で大きな話題になりました。

スローニュースでも放送時、「今日の必読」でご紹介しましたが、その際、冤罪を生み出した根底にある「経済安全保障」という闇についても、「さらなるメスが入ることを期待したい」と述べていました。

その闇に迫る報道を、NHKが続報として発信しました。

続報 “冤罪”の深層〜新資料は何を語るのか〜

冤罪がどうして出来上がったのか。前の番組では完全には検証できていないファクターが二つありました。それが「警視庁から相談を受けた経済産業省はどう判断したのか」「捜査指揮をするはずの検察庁は冤罪にどう関わっていたのか」ということです。

前の番組の放送後に、制作陣の一人とお会いする機会があり、すばらしい報道だと称賛しつつ、その点を指摘しました。すると彼は「にやり」として「そこ、まさにやってますよ」と力強く宣言したのです。

宣言どおりの、すさまじい番組でした。新たに入手した資料や証言をもとに、無理やりの捜査の実態を明らかにしていきます。

当初は警視庁の「転用可能」とする解釈に対し、問題点を指摘していた経済産業省。しかし公安部長も期待しているというようなことが伝わると、幹部案件となり、警視庁の捜査を後押しするような姿勢に変化していったことが明らかになります。そして「経済安全保障」という「政治家が喜ぶ」案件として捜査が進められていくのです。

さらに検察庁では、最初とその次の担当検事は捜査の問題点を指摘していたものの、三番目の担当検事は捜査に前向きな姿勢をとっていました。番組の取材班は、その三人目の検事にも現在の職場に行って取材をしています。

どのような展開になり、真相はどこまで掘り下げられたのか。関係者が後になって焦っているような驚愕の記述が入った資料も登場。詳しくは番組をご覧ください。

それにしても、事件の真相を知るために、必要な取材を丁寧に重ねていくこの姿勢、これこそ調査報道だと震えるほどでした。NHKプラスでの配信はもう終了していますが、いずれNHKオンデマンドなどで見られるようになるのではないでしょうか。前の番組とセットで一つの報道ですので、機会がありましたらぜひ。(熊)

(NHK 2023/12/23)


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