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妻を薬で眠らせて50人にレイプさせた事件がフランス社会を揺さぶる理由

薬物で妻の意識を失わせ、インターネットで集めた男50人以上にレイプをさせた事件で、フランスの裁判所は12月19日、元夫に対し、求刑通り禁錮20年の判決を言い渡しました。

事件そのものは異常な犯行ですが、背景にはフランス社会の抱える普遍的な問題があり、それゆえ世論が激しく揺れていることを、BBCニュースのパリ特派員が解説しています。

記事によるとフランスで性暴力が後を絶たない背景に、被害を訴えても事件にならないケースが多いことをあげています。

フランス公共政策研究所が今年発表したデータによると、2012年から2021年の間に、性的虐待の被害届の平均86%が不起訴、あるいは公判に至らないまま終わっている。レイプの被害届については約94%が同様の扱いを受けている。

【解説】レイプに対するフランスの見方を変えた女性、ジゼル・ペリコさん

だからこそ、被害を訴えたジゼル・ペリコさんの「恥ずかしいという思いを、被害者からレイプ犯に移す」という決意の言葉が、たくさんの女性、そして男性の共感を呼び、支持を集めました。

すでに社会にも変化が生まれています。

仏紙リベラシオンは9月21日、俳優や歌手、音楽家、ジャーナリストなどの著名なフランス人男性らによる公開書簡を掲載した。書簡は、この事件が、男性による暴力が「怪物の問題ではない」ことを証明していると主張している。
「それは男性、つまり『ムッシュ普通の人』の問題だ」
「すべての男性は例外なく、女性を支配するシステムから利益を得ている」

【解説】レイプに対するフランスの見方を変えた女性、ジゼル・ペリコさん

ジゼルさん自身にも、その変化が力を与えています。

裁判が始まって最初の数週間、裁判所へ向かうジゼルさんは肩をすぼめ、身を守るような姿勢で歩いていた。事件が引き起こした関心があまりに高く、戸惑っているようだった。しかし最終弁論の頃には、その態度は様変わりし、完璧に落ち着いて座っていた。

性的暴力に社会がどう向かい合っていくのか。「恥ずかしいという思いを、被害者からレイプ犯に移す」という言葉は、日本においても重要な意味を持ちます。(瀬)

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