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オーストリアの次期首相候補に持ち上がったスパイ疑惑に火をつけたネットメディアの調査報道

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

プーチンはオーストリアのスパイ組織を乗っ取った。今度はオーストリア政府を狙う

なんとも刺激的なタイトルの記事ですが、中身はロシアのスパイ活動とそれに操られるオーストリア政府の内情を赤裸々に描く大変なスクープでした。

アメリカの政治専門サイト「POLITICO」の長い、インパクトのある調査報道が、オーストリア政界を揺るがしています。

https://www.politico.eu/article/austrian-liberals-demand-probe-far-right-leaders-putin-links-neo-intelligence-influenc

ロシアがスパイをあやつり、オーストリアの情報機関BVTと警察との激突させ、BVTの組織を壊滅。そのかわりに自らの息がかかった人物を情報機関のトップに送り込んだというのです。

その手口は、スパイ映画も真っ青です。

美女を使ったハニートラップにはじまり、そこから警察や情報機関の組織にエージェントを送り込み、そこで情報戦をしかけて内部分裂に追い込む。さらには虚実入り乱れたスキャンダルを当局やメディアに送りつけ、最終的に警察がBVT本部に踏み込むように仕向け、その混乱の最中に、BVT本部にある西側の情報機関のデータなどを盗み出そうとしたというのです。

このスキャンダルが政界を揺るがすのは、オーストリアで急進する極右政党、自由党のキックル党首が当時の警察を管轄する内相であり、ロシアの工作の影響を受けている疑いを指摘していることです。自由党はそれを否定しますが、リベラル政党は「国家反逆罪」について調査をするように要求しています。

これまで自由党の支持率は高く、6月の欧州議会選挙と秋のオーストリア国民選挙で、ともに勝利することが予想されています。キックル党首はオーストリアの次期首相になる可能性が高いのです。

もし、そうなればプーチン政権を支持する政党が初めて西ヨーロッパの国のトップに立つことになるという指摘もあります。

ネットメディアの先駆けといわれたPOLITICOの調査報道は、オーストリアだけでなく、EU、そしてウクライナ戦争にも影響を与える可能性があります(瀬)