厚労省『国民生活基礎調査』から見えてきた「老後に本当に必要なものは何か」
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「60代は人生の楽園だが、70代以降は一転」多くの日本人が天国から地獄へ"メンタルの急降下"が不可避のワケ
「幸せな老後」というのは本当に難しいのだなあと、厳しい現実をつきつけられます。
プレジデントオンラインで統計データ分析家の本川裕さんが、厚労省の「国民生活基礎調査」の結果を紹介しています。
国民生活基礎調査は、保健、医療、福祉、年金、所得など国民生活の基礎的事項を調査し、 厚生労働行政に必要な基礎資料を得ることを目的に、1986年以降、3年ごとに大規模調査を行っています。
30万世帯を対象にした調査では、こころの状態を「絶望的だと感じましたか」「そわそわ、落ち着かなく感じましたか」「自分は価値のない人間だと感じましたか」など6つの設問について、「まったくない」「少しだけ」など5段階で評価をしてもらいます。それらの集計結果の総合点で「精神状態が良好」かどうかを評価しています。
その結果を分析した本川さんは2つの指摘をしています。
ひとつは、「精神状態が良好な人」の割合がどの年齢でも女性が男性を下回っていること。女性はどの年代でも、精神状態が良好な人が男性より少ないのです。ショックですねえ。
もうひとつ衝撃的なのは男女問わず、65歳から69歳を境に、精神状態が良好な人の割合が目に見えて減り始めることです。
精神状態が良好な人の割合は、30代が少なく、60歳に入って跳ね上がっています。「子育て終えて、定年を迎えて幸せな老後かあ」と安心するのもつかのま、70代後半から急落していきます。
その原因はなにか、本山さんは同じ調査で聞いている「悩みやストレスの原因」に目をつけます。そうすると、「自分の病気や介護」という悩みが70代に入って急増をしているのです。やはり健康が原因なんですね。
「家族の病気や介護」も気になるますが、女性に関しては年齢を重ねるほど減少していくことも興味深いです。
おカネはどうなのか。「収入・家計・借金」という悩みは50代以降減り続けているんです。もちろん収入の心配がないのは、年金に恵まれたいまの高齢者世代でこれからは大きく変わってくるのかもしれません。
のんびりした老後を送るためにはなにより健康が大切だという当たり前のことを、国民生活基礎調査のデータがあらためて教えてくれます。(瀬)
(プレジデント・オンライン 2023/9/12)