医療系政治団体、暴力団がらみの疑惑企業、新興宗教法人…誰が寄付しているのかが見えてきた!【全議員データで見えた政治とカネ③】
国会議員全員の関係する団体の政治資金収支報告書をデータベース化して分析する取り組み、3回目は「誰が寄付しているのか」を取り上げます。
前回の衆院選があった2021年の1月~10月のデータベースをもとに分析したところ、議員の団体に最もカネを提供している組織や企業が見えてきました。
集計:「政治資金データベース」制作グループ/構成・文:熊田安伸
自民は企業や業界団体からの寄付も、選挙のあった10月に集中
交付金に次いで収入の多くを占めているのが「寄付金」です。選挙のあった10月の寄付金収入で検証してみましょう。
最も多いのは、自民党への寄付で24.7億円です。
その内訳を詳しく見ると、政治団体からの寄付が12.6億円と最も多く、次いで法人からの寄付が6.8億円です。業界団体や企業から、選挙の10月にカネをかき集めている様子がうかがえます。
個人 法人等 政治団体
自民議員への10月の寄付 24.7億円 5.3億円 6.8億円 12.6億円
公明議員への10月の寄付 0.5億円 0.2億円 0.1億円 0.3億円
立民議員への10月の寄付 3.4億円 1.1億円 0.7億円 1.6億円
他の政党の10月の寄付を見ると、公明党は5000万円で、確かに普段より増えてはいるものの、比較にもなりません。立憲民主党は3.4億円で、やはり他の月より数倍に増えてはいますが、自民とは大幅に差があります。またいずれの党も、法人からの寄付より、個人からの寄付の方が多くなっています。
心配なのは、公職選挙法で国と契約関係にある者が国政選挙に関する寄付(特定寄付)をすることは禁じられていることです。10月に寄付となると、まず選挙に関係してくるものでしょう。そういう企業が寄付していないかも、気になるところです。以前、スローニュースでは、沖縄の自民党議員をめぐる特定寄付の問題を報じています。
派閥マネーに支えられていた自民議員
では、具体的にどのような政治団体が寄付をしたのでしょうか。ここからは2021年1月から10月の総額を見てみます。
まず自民党の議員では、最も収入に貢献していたのは、派閥の政治団体でした。志公会(1億5346万円)、志師会(1億4450万円)、平成研究会(1億3933万円)、宏池政策研究会(9597万円)、清和政策研究会(9400万円)、有隣会(4194万円)、水月会(3935万円)、近未来政治研究会(1500万円)と、派閥マネーが配られていたことがわかります。裏金ではなく、表のカネだけでもこれだけあったということです。
派閥ではありませんが、石破首相の政治団体、石破茂政経懇話会(1000万円)も自派閥の議員への寄付を行っていたので、派閥の団体と同じ機能を担っていると解釈できます。
これらの政治団体の寄付の総額は7億3355万円で、寄付全体に占める割合は38.7%にのぼっていました。自民党の議員にとって、派閥に属しているかどうかはやはり資金調達の面でメリットが高いことがデータからも裏付けられました。
月別に見ると、やはり寄付は10月に集中していていて、清和会が寄付の78%、宏池会が60%を10月に寄付しています。
派閥マネーに匹敵する、医療系の政治団体の献金パワー
派閥以外の政治団体として自民党への寄付の額が大きかったのは、医療系の政治団体です。
まず、目立つのは日本医師連盟で、5646万円でした。ただ、これだけではありません。日本医師連盟は、本部のほか各都道府県ならびに市町村区にある医師連盟(例えば東京都医師政治連盟、広島県医師連盟など)を通して献金を行っているので、すべての医師連盟の寄付を積み上げると、総額で3億3839万円にのぼり、寄付全体に占める割合も17.8%にのぼっていました。
日本歯科医師連盟も同様で、本部からは4010万円ですが、都道府県や市町村区にある歯科医師連盟のすべてを含めると総額では1億1357万円(全体に占める割合は6.0%)となっていました。
また、日本精神科病院政治連盟、整形外科医政協議会、日本眼科医連盟、日本看護連盟、日本薬剤師連盟といった、日本医師連盟と日本歯科医師連盟以外の医療系の政治団体の寄付の総額は2億9120万円(15.3%)でした。
こうした医療系のすべての政治団体を足し合わせると、自民党議員への寄付は全体の33.2%に及び、派閥マネーに匹敵することがわかります。
月別にみると、やはり医療系の政治団体も、寄付額上位の団体の多くは、選挙が行われた10月に集中的に寄付していました。