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独占告白!「私は罪を償いたいのです」内部告発した警察官が「カラ出張の手口」をすべて語った

取材・執筆 フロントラインプレス

広島県の警察署で繰り返されていたという「カラ出張」の問題。内部告発した元巡査部長(40代)は、いま何を思うのか。

今月30日に行われる広島県情報公開・個人情報審査会を前に、カラ出張の実態や告発に至る経緯、その後の出来事など、自らが知る全てをフロントラインプレスの取材に語った。

その内容を一問一答形式でお伝えする。


刑事に憧れたが、国直轄の警備・公安部門に

元巡査部長(40代)は広島県の出身。地元の学校を出た後、警察官になった。犯罪被害者らのために寸暇も惜しまず働き、困難を抱えた人のために役立とうとする姿に憧れたという。

刑事部門を望んでいたが、交番勤務などを経て配属されたのは警備部門。要人警護のほか、テロ対策、過激派組織の動向監視など、社会の治安維持を担う重要な職務である。

日本の警察は制度上、都道府県単位の組織であり各警察本部長がトップを務める。ただし、警備・公安部門は警察庁が指揮する。各都道府県警察の警備・公安部門は、いわば「国直轄」。その捜査に必要な公金も「国費」が充てられている。

「最初は本物の出張でした」

――カラ出張を経験した際の様子を詳しく教えてください。最初は2019年、福山市内の警察署の警備課に勤務していたときですね?

男性 2019年の6月がカラ出張の最初だったと思います。ただし、その出張そのものは4月から始まりました。最初はカラではなく、本物の出張だったのです。

4月のある日、私も含む警備課の数人がある地域へ出張し、そこで上長から業務の説明を受けました。その後、今度は課員1人ずつが上長と組む形で同じ地域へ出張しました。本格的な業務が始まったわけです。

その業務(出張)は月に2回程度でした。上長と警備課員による2人1組のペアで行われ、課員はその都度、違う者が従事します。

警備に関わる事柄なので業務の内容は言えませんが、現場には上長と課員がそれぞれの自家用車で別々に出向きます。上長の業務を別の課員が(離れた場所から)確認すると、課員はそれを県警本部の警備課に電話で報告する仕組みでした。

(イメージ)

業務の場所は遠いですから、前日までに出張願を作成します。高速道路を走るため、会計課が管理しているETCカードを借りて使用します。車両の走行距離に合わせて旅費が出ますし、朝早いこともあって時間外手当も出るということでした。

別の警察署でも「エアーはやっているから」と

――最初は本当の出張だったとして、では、カラ出張はどのように始まったのですか。

男性 2019年の5月ごろまでは課員がローテーションでペアを組み、実際に現場に言っていましたが、あるとき、組織の上からこう命令されました。6月になってからです。

「朝も早いし、(何人も現地にいると福山市内の警察署の)態勢が弱くなるから、現場には来なくてよい。エアーでよい」と。

「エアー」とは、カラ出張の「空」から取った隠語です。そして、こうも言われました。

「県警本部に報告するから(齟齬のないよう)出張願は出しておけ。ETCカードはあらかじめ、会計課から借り受けておけ。出張願との整合性をつけるため、時間外も付けておけ」と。

そのうえで、別の警察署の名前を出し、「(その警察署でも)同じ方法でやっていたから全く問題ない」と言われたのです。

――他の警察署でもずっとやってきたことだし、全く問題ないというわけですね……。それにしても、カラ出張は明らかな法令違反です。

男性 その通りです。命じた方も従った方も、詐欺や業務上横領、虚偽有印公文書作成、電磁的記録不正作出・同供用などの罪に該当する恐れがあります。

「カラ出張」の旅費などが振り込まれた男性の銀行口座の通帳(撮影:フロントラインプレス)

――それをわかっていながら、命令に従ったのでしょうか。

男性 カラ出張が始まった直後は、上長から「上と話は通っている。前の部署でもそうしていたから問題ない」と言われていたため、課員も「そういうもんなんだ」という程度の認識だったのかもしれません。

ただ、少なとも私は変だなと感じていました。しかし、警察組織では“上の命令は絶対”なのです。命令に背くような意見具申は取り合ってもらえないし、それでも何かを具申するときは辞職や左遷を覚悟しなければなりません。

あとで詳しくお話しますが、精神的に本当につらかったです。命令とはいえ、なんでこんな違法なことをせないけんのか、苦しくてたまらなかった。

どのようにしてバレないようにしていたのか

――カラ出張はその後、どう展開していくのでしょうか。

ここから先は会員限定です。公安部門で行われていた「犯罪行為」と元巡査部長が指摘する行為はどういうものだったか、詳細に語っていきます。

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