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「善人だった私は、犯人に明確な殺意を持った悪人の予備軍となりました」 『京アニ放火殺人事件』遺族の重い「ことば」を伝えるMBSの裁判報道

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

「小説ごときで娘は殺されたのか。絶対に、絶対に許さない。」「遺体を引き取って顔を見ました。そこで私は子守唄を歌いました」遺族らが青葉真司被告に伝えた"ことば"【ドキュメント京アニ裁判⑱】

「私は善人だった妹を失い、善人だった私は、犯人に明確な殺意を持った悪人の予備軍となりました」

2019年に36人が殺され、30人以上が重軽傷を負った京都アニメーションの放火殺人事件。11月30日に行われた法廷で、入社3ヵ月で犠牲となった笠間結花さん(当時22)のお姉さんが書面で心中を吐露しました。

犠牲社員、被害者の遺族が直接、または書面で陳述した「ことば」を詳しく記したMBSNEWSの裁判報道は、涙なしには読めませんでした。

これまで人に殺されることはもちろん、殺すことなど考えたことがなかった普通の幸せな家族の暮らしが、この事件を境に一変したことが伝わってきます。

記事は、この日の法廷で最後に意見陳述をした、入社1年目で犠牲となった兼尾結実さんのお母さんの「ことば」も紹介しています。

あの日、事件のことを知り、結実が好きな庭のミニトマトをちぎってタッパーに入れて、保冷材で冷やしながら京都に向かったのは、まさかこんなことになるとは思っておらず、「結実が火事で怖い思いをして、ご飯を食べられなくなっているかもしれない。トマトなら食べられるかもしれない」と思ったからです。でも、トマトを結実に食べてもらえることはありませんでした。

やさしいお母さんの行動と、その後に待っていた悲劇の対面を思うと、胸がつまります。

これまでMBSは9月5日にはじまった初公判を【ドキュメント京アニ裁判】という連載として追いかけ、法廷で語られた証言やそのようすを詳しく報じています。

京アニ放火殺人事件では、遺族の意向もあり被害者の名前を報じるかどうかが、議論されました。その中であらためて問われたのが、報道の社会的意義です。

こうした丁寧な裁判報道も、事件を風化させず、問題提起をし続けるために、重要な役割ともいえます。(瀬)