沖縄自民議員の「政治とカネの問題」どうやって気づき、調べたのか。ツールや手法を調査結果のデータとともに全公開
【10秒要点チェック】
どのように問題に気づき、どう取材・調査をしたのか、分析結果のデータとともに全公開
政治資金収支報告書をどうやって集め、分析したのか
国との契約業者の情報をどんなツールで収集・確認したのか
取材・執筆 フロントラインプレス
【前回までのおさらい】
ふだんは全く動きがないのに、国政選挙の前後になると、企業から政治家側への献金が急増する――。フロントラインプレスのメンバーがふと、これに気付いたことから、沖縄の国会議員5人を対象とした「自民党とカネ」の取材は始まった。
2月14日までにスローニュースで発表した記事は5本。政治資金として寄付された企業のカネが「政党支部」を通して政治家個人にたどり着き、事実上、選挙運動資金として使われている事実を明らかにした。その中では公職選挙法の規定(特定寄付の禁止)に違反し、国と契約関係にある企業からの献金も多数発覚した。その額は2021年までの10年間で2000万円を超えた。
フロントラインプレスの調査は今後、対象を広げ、視点も変えてさらに続くが、「どうやって取材しているのか」をここで明らかにしたい。意外と方法は簡単。根気は必要だが、メディア企業に勤務する記者でなくとも、社会に広く関心を寄せる方なら誰でも実行できる方法だ。
収支報告書を見て気づいた「ゼロと集中」、その違和感がきっかけ
今回の取材をメーンで担当した3人は昨年9月、大阪で顔を合わせた。焼肉を食べ、ビールで喉を潤した後の喫茶店。ガード下の店でコーヒーを飲みながら、鈴木祐太がこう言った。
「政治資金の収支報告書を見ていると、企業献金や業界をバックにした政治団体からの献金が、選挙前後に集中しているんです。選挙のない年はゼロなのに、選挙があると、短期間に数百万円も献金されています。政治資金と選挙資金は別ものというのが政治サイドの言い方ですが、実際は政治資金も選挙のカネなんじゃないでしょうか」
鈴木祐太は昼間はふつうの会社員だが、終業後や休日になると、寸暇を惜しむように政治とカネの関係を調べている。
政治資金収支報告書の読み込みにも長けており、自民党政治資金パーティーの裏金を東京地検特捜部に刑事告発した上脇博之・神戸学院大学教授とも近しい。上脇教授の分析を手伝うことも頻繁にある。
その鈴木が「ぜひ取り組みたい」と語り、その場にいたメンバー3人で早速、本格的な取材に着手することになった。鈴木は、当時こう考えていたと振り返る。