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「過労死ラインを超えているのに…警察官はサービス残業が前提なのはおかしい」福島県警の元警察官が異例の提訴

警察官だからといって、サービス残業を強いられるのはおかしい! 在職中に支払われなかった約136万円の時間外手当を支払うよう求め、福島県警の元警察官が福島県を相手取った訴訟を福島地裁に起こした。警察官が正当な時間外手当の支払いを求めた訴訟は近年ほとんどなく、異例の訴訟と言える。

福島県警に限らず、警察官の時間外手当については実際の稼働時間に見合った金額が支給されないことが多く、不正や不公平の温床になっているとされる。いわば、警察の“伏魔殿”で、訴訟の行方は全国に大きな影響を与えそうだ。

県側は答弁書で訴えの棄却を求めている。第1回の口頭弁論は7月2日、福島地裁で開かれる。

フロントラインプレス


支給された残業代が「たったの2割だけ」

訴えを起こしたのは、福島県内に住む男性で、2022年11月末まで福島県警の警察官(巡査部長)として勤務。最後は、福島警察署の交通第2課に所属し、交通事件の捜査などに従事していた。

元巡査部長(撮影:フロントラインプレス)

訴状や男性の代理人である倉持恵弁護士によると、福島県に請求した未払い時間外手当は2022年4月〜8月にかけての5カ月分で、総額136万9322円(8月は1日〜20日)に上る。

それによると、この5カ月間の時間外勤務は総計600時間以上。稼働日数の少なかった8月も含め、1カ月あたりの平均時間外は120時間以上に達する。福島県の条例などに則ってこれらの時間外手当を計算すると、実際の支給総額は175万3414円になるはずだったが、実際にはその2割にしかならない、38万4092円が支払われただけだったという。

「上司の裁量で支払う警察の仕組みはどう考えてもおかしい」

原告の元警察官は「警察組織には変えなければならない点がたくさんある。不祥事の隠蔽、職員の拳銃自殺、自浄作用の欠如……。時間外手当の問題はその1つであって、上司の裁量で生活給的に払う現行の仕組みはどう考えてもおかしい。昼夜を問わずに献身的に治安のために働く警察官が報われるように、裁判所には『悪いところは悪い。直しなさい』と認めてもらって、警察組織を変える第一歩にしたい」と話している。

倉持弁護士は「そもそも法の執行者である警察が法を守るのは当然。労働法規も例外ではない。時間外労働の時間の多寡ではなく、生活給的に、いわば上の判断で随意に手当を付けているんだと幹部が平然と言ってのけている。その証拠もある。労働時間に基づいて残業代が払われるのは当然の前提であり、その仕組みを全く無視していること自体が大きな問題だ」と言っている。

代理人の倉持恵弁護士(撮影:フロントラインプレス)

いわゆるサービス残業について、これを不当だとして警察官が裁判に訴え出た実例は、ほとんどない。では、福島県警の元警察官はなぜ、この訴訟を起こしたのか。

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