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日本テレビが検証番組で明かした報道幹部も蝕んでいた「ジャニーズの影響力」

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、社会の制度の矛盾を突いたコンテンツをおすすめしています。

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ジャニーズ事務所の“性加害問題” 日本テレビとして自己検証 「マスメディアの沈黙」指摘ふまえ社内調査を実施

記者会見で「NG記者リスト」を用意していたことをNHKがスクープするなどジャニーズ性加害の報道は続いています。

一方でこの問題については、再発防止特別チームが指摘するように、「マスメディアの沈黙」に大きな責任があったことはいうまでもありません。

そんな中、日本テレビが、ジャニーズ事務所との関係について自らで検証を行い、9月4日の『news every.』で、「これまでにわかったこと」として報じました。

番組では、性加害を認定した裁判の結果をなぜ報じなかったのか、キャスターを採用したジャニーズと報道との関係、24時間テレビなど番組キャスティングへ影響力などについて、ジャニーズへの配慮、忖度がいたるところにあったことを関係者の証言を明かしていきます。

特に衝撃的だった報道への影響力です。たとえば、2018年のジャニーズ事務所所属タレントの強制わいせつ事件について、編成と報道部門が協議を行い、報道部門幹部が「必要以上に慎重になり」、報道が他者より遅れたという事実を明らかにしています。

社会的責任を背負う報道が自局の利益を優先する姿勢に、出演した田中東子・東京大学大学院教授は「ショッキング」と指摘しています。

他の民放局にくらべて、ジャニーズ事務所との関係を検証し、それを率直に明らかにする日本テレビの姿勢は高く評価できます。さらなる検証や情報公開に期待したいです。

番組で気になったのは、今後の対応です。

性加害への認識不足については「人権方針の策定」など施策を打ち出しています。しかし、損なわれていた報道の中立性をどう回復するかについては、「自律的」という言葉を繰り返すだけで具体策は明かさず、決意表明にとどまっています。

田中教授は、おかしいと思っても声をあげられない企業内の人間関係や力関係に問題があるのではないか、という指摘もしています。報道が社会的責任を果たすために、こうした問題への改善策をどう打ち出していくのかにも注目したいです。(瀬)
(news every. 2023/9/4)