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地下水の汚染源はどこだ?!秘密ファイルから浮上した「疑惑のゴミ捨て場」【スクープ連載『デュポン・ファイル』第2回】

国際機関から発がん性を指摘されている有機フッ素化合物、総称「PFAS(ピーファス)」。三井・デュポンフロロケミカルの清水工場(静岡市)で半世紀以上にわたって使われ、工場の内外を汚染していた。その工場内の極秘データが収められた「デュポン・ファイル」を入手。5万ファイルに及ぶ膨大な資料を紐解きながら、「地下水汚染」「排水汚染」「大気汚染」「体内汚染(従業員)」の実態を4週にわたって描く調査報道シリーズの連載第2回。

前回、「なぜ工場の外に汚染が広がっているのかわからない」という元幹部の発言を紹介した。いったい汚染源はどこなのか――今回はその謎に迫る。

フリーランス 諸永裕司


工場の南西角の井戸から「高濃度のPFOA」

1965年に稼働した三井・デュポンフロロケミカル(当時)の清水工場。この工場がもたらした汚染のうち、もっとも象徴的なのが地下水汚染だ。

それが広がっていた状況が分かる資料を「デュポン・ファイル」の中に見つけた。

「Analytical Results Shizuoka, Japan C8 Sampling」というタイトルの資料だ。工場内の井戸の水に含まれるPFOA(PFASの一種)の濃度を分析して、2004年12月に作成されたものだ。

  • 「旧1FR西側」の「地下水」

  • 工場から出た排水がすべて集まる「末端排水」

  • それが工場外で合流する「末端排水合流地点(場外)」

表を見ると、その3カ所で濃度が高いことが一目で分かる。「FR」とは「フィルド・レジン」というプラントの名称を意味する。

汚染対策を検討していた工場の担当者も、この数値に注目していた。表の下にこう書かれている。

表に示された単位はppb(ピーピービー)だ。この数字を1000倍にすると、現在、水質管理に使われるng(ナノグラム/1リットルあたり)に相当する。

つまり、旧1FR西側の地下水の濃度は2002年には120万ナノグラム。これでも十分に高い値だが、さらに2004年になると、195万ナノグラムに上がっていた。2004年の数値を現在の指針値に当てはめると、3万9000倍もの濃度だったことが分かる。

「SHIMIZU WORKS」と題された工場の見取り図を見ると、焦点となる旧1FR西側の井戸は南西角に近い境界にあり、「WELL 1」と名づけられている。

プラントから「C-8流出の可能性」

なぜ、この井戸だけ濃度が下げ止まらないのか、それどころか上昇しているのか。PFOAに汚染されたのはなぜなのか。いったい、どこから流出したのか。

それは工場の従業員たちにとっての謎だった。一刻も早く、汚染源を突き止めなければならない。一連の極秘資料からは、焦りのようなものもにじみ出ている。

「末端排水」の濃度が高い原因は工場のプラントから出たものと推定できるので、出元は特定しやすい。だが、「地下水」が汚染された理由がわからない。

資料を読み進めると、従業員たちの議論のなかで浮かんだ、ある仮説が記されていた。

「WELL1」の近くにある「旧1FR」というプラント。場所から考えると、そこがやはり最も疑わしい。(上記見取り図では「Old Filled Resin」と表記)

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