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検察も知事側も説明しなかった事件の真相が発覚…1億5000万円は知事側に「あげたお金だった」という供述を刑事記録から発見したスクープ!

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

昨日に続き、今日もまた「諦めなかった記者」の執念のスクープをご紹介できるのは、本当に嬉しいです。

知事後援会 父親から上限100倍超の寄付か すでに時効

岡山県の伊原木知事の後援会が、知事の父親らから別の団体を通して上限を超える寄付を受け取っていた事件。NHK岡山放送局の調査報道をきっかけに当局が動き、結局、当時の会計責任者など2人が政治資金収支報告書に嘘の記載をしたとして、政治資金規正法違反の罪で略式命令を受けました。

それが去年の10月。当局の事件処理としてはこれで決着です。しかし、元々この事件をスクープした記者は、もやもやが消えません。事件の真相は何だったのか、検察も詳しく説明しませんでした。略式命令なので公判も開かれず、詳しい捜査の中身がわからないのです。

それでも記者は諦めませんでした。何をしたか。「刑事事件の確定記録」を閲覧することにしたのです。

刑事記録とは、刑事裁判のために作られるものですが、公判が開かれない略式命令などの場合でも作成され、確定すると検察庁に保管されます。その中には捜査機関が作成した「供述調書」なども含まれるのです。

今回の場合は略式命令なので、記者が保管してある岡山区検に行って確定記録を確認したところ、なんと知事の父親が検察の任意の調べに対し「本来はあげたお金なのに、借入金として実態とは異なる処理がなされていた」と供述していたのです。

後援会の政治資金収支報告書には、知事が初当選した2012年には父親からの「借入金」が1億5400万円と記載されていました。その巨額が、実は「あげたお金」だったのです。

政治資金規正法では、政治団体が1個人から1年間に受け取ることができる寄付の上限は150万円。その100倍にものぼります。

違法な献金だとしても、5年の時効が成立しています。とはいえ、検察も知事側も一切明らかにしてこなかった、事件の真相が浮かび上がりました。

実はこの刑事事件の確定記録、記者ならずとも誰でも見られる制度になっています。興味のある事件について調べたい方は、『記者のための裁判記録閲覧ハンドブック』という本も出ているので、そちらを読んでみてはいかがでしょうか。

この刑事事件の確定記録を閲覧するという手法、ほんの一握りの記者が使うようになってからまだ数年です。でも、最近では市民団体が閲覧して活動に役立てているという話も聞きました。

裁判の記録というのは国民の共有財産です。今回のケースのように全国で当たり前のように使われるようになってくると、アクセスしにくかった刑事裁判に関する情報の公開につながってくるのではないでしょうか。(熊)

(NHK岡山 2024/5/23)

※サムネイルの知事写真は岡山県のホームページから。岡山区検の入る合同庁舎は©Google