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あえて問いかける「偽情報は民主主義に深刻な脅威を与えている」という前提への疑問

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

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偽情報の社会的影響を巡って

政府が偽情報対策に本格的に乗り出しています。

オンライン上のフェイクニュース対策という立場から総務省、感染症対策という観点から厚生労働省にくわえて、最近では安全保障を理由に官邸がリードし、内閣府にプロパガンダ対策などにとりくむ部署を設置しました。

一方で、こうした取り組みは、政府による言論監視、介入につながるという重大な懸念をつねに抱えています。

この問題について、偽情報の脅威が過大評価をされているのではないか、という指摘を、八田真行・駿河台大学経済経営学部教授があらためて投稿しています

偽情報が民主主義に悪影響をもらたす可能性があることについては、多くの人が異論はないでしょう。また将来、テクノロジーの進歩によって深刻なリスクが生じる可能性も当然あります。

しかしいまの段階では、偽情報の脅威が過大に評価されているのではないか、と八田さんは指摘。海外での研究や記事を紹介しています。

日本で反ワクチンの偽情報に踊らされている人についても、偽情報の訂正やファクトチェックはリアルタイムで大量に行われていても彼らが行動を変えなかったことから、偽情報に騙されたというより、偽情報が彼らの元々の世界観やおかれた環境と親和性が高かったためではないか。こうした背景を放置したままで、偽情報対策だけに力をいれることの懸念を八田さんは示しています。

実際、災害に対する偽情報として、熊本地震のときに「動物園からライオンが逃げ出した」というSNSの投稿が出回った事例が、政府での議論でもひんぱんに取り上げられています。しかし、実際にその偽情報を信じた人がどれほどいたのか、どんな影響があったのかーーに関しては、ほとんど報告されていません。

民主主義への脅威という題目は誰しも反対しにくい。しかし、だからこそ、丁寧な実証にもとづいた議論、対応が必要です。(瀬)