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ローカル局のコンテンツが宝の山に!?「LCB」は新たな希望となるか。そして今の時代のユーザーに着実にコンテンツを届ける方法とは【InterBEE 2024リポート④】

日本最大級のメディア総合イベント「InterBEE」。メディアの最新事情を知ることができるセッションの中から、注目の内容をリポートしています。

いま、地方55局が連携して「LCB」という新たな取り組みを始めています。ローカル局のコンテンツが宝の山になるかもしれない画期的なこの試みを解説したセッションについて詳しく紹介します。さらに、ユーザーへの「直接的なアプローチ」ではダメな理由と、コンテンツを着実に届ける戦略も。

InterBEE公式のアーカイブでの配信がないセッションなので、詳しい内容はこの記事でしか読めないかも。ここまで厳しい話も多かったですが、今回は対処法や解決策を述べています。

スローニュース 熊田安伸


「ローカル局のコンテンツは埋もれている」という危機感

「ローカル局コンテンツに明日はあるのか?」と題されたこのセッション、モデレーターはTVQ九州放送の永江幸司さん。「TVerでローカル局の番組も見られるようになったが、タイトルが多い。視聴傾向もドラマやキー局、準キー局制作のバラエティで番組に集中していて、現実的にはローカル局のコンテンツは埋もれている」と指摘します。

永江幸司さん

「このため、YouTubeで展開しなければ、となるが、YouTubeこそ無数にある動画に埋もれるし、常に新しいクリエイターが参入してくる。そのうえ、Googleのレコメンドに左右され、しかも広告の単価が安くて売り上げをカバーするほどにはならない。海外輸出に目を向けると、日本の放送コンテンツは順調に伸びてはいるが、大部分はアニメで、ローカル局の海外展開の動きは拡大していない」

「乳がん」の経験が新たな発想に!?

そんな危機感の中、ローカル局に大きなインパクトを与えるかもしれない新たな取り組みが紹介されました。その名も「LCB(=Local Contents Bank)」です。

紹介してくれたのは、北海道テレビ放送の編成業務部長、阿久津友紀さんです。実は阿久津さん、乳がん患者で、その時の体験がLCBの発想につながったのだとか。

セルフドキュメンタリーを制作したところ、YouTubeが80万回以上の再生に。270本に及ぶ体験記の記事も、毎回10万アクセスがあり、全国から励ましの声が届きました。ローカル発なのに、東京から九州まで講演にも呼ばれました。

「ローカル局は放送して終わりではなく、二次利用、三次利用のきっかけになるんだ」と体感した阿久津さん。これを自社のIPとして考えたらどうだろうと思い付き、ガン教育の教材となるVTR作成し、北海道以外にも広げようと活動を始めました。ローカル発のコンテンツでも、エリアをまたいで価値化ができると確信したそうです。

「ローカルを束ねれば価値になる」

そこで始めたのが、「LCB」です。人もカネもないローカル局では、毎日のように情報番組のコンテンツを作っているのに、マネタイズができていない。そこで、ローカルで共創しようと、同じ懸念を抱く全国55局が系列を超えて集まりました。形式としてはA-PUB(一般社団法人・放送サービス高度化推進協会)の実証実験として、プロジェクトを1年前から立ち上げました。

LCBのコンセプトは、「コンテンツをためて、ととのえる」です。

たとえとして挙げあられたのは、漁。「ザクっと魚をすくっても使えない。いろんな魚を分類して、串を刺して整理する必要がある。例えば<北海道の温泉>で串に刺せば、まとめて見てもらえるのではないかという実証実験です」

要するに、ローカル局が制作するコンテンツの束(コンテンツのメザシ)を生成して、それを配信プラットフォームに提供すれば、新たな価値のあるコンテンツとなり、流通する機会も増えるのではないかということです。これを日本だけでなく、世界中の人々がアクセスして使えるようにしたいといいます。

ローカル局がこのLCBにコンテンツを投入すると、その概要やキーワード、スポット名、タグ、サムネイルなどをおすすめしてくれて、手間を省いてくれるといいます。そうなると、例えば二郎系ラーメンで検索すると、あっという間に全国のローカル局の番組の中から二郎系ラーメンのコンテンツを選んでくれて、特集ができてしまうし、マイプレイリストも作れるとのこと。情報番組の気軽な話題だけでなく、硬派のドキュメンタリーなども包摂させていくとのことです。

これはコンテンツ利用が一気に進みそうな予感がしますね。

12月23日から来年3月3日にかけて実証実験が行われる予定で、TVerではローカルタブを意識して、「東北のラーメン」「九州のラーメン」のような動画の束を提供できないかと考えているということです。このほかにもSPOOXでは全国の地域をまたいだコンテンツ制作や、WEB番組表への応用なども試されるということでした。

将来的にはAIの活用で自動翻訳して海外向けのコンテンツやFAST化も目指したいと、夢は膨らんでいるようです。セッションの終了後に阿久津さんに直接、お話を聞いたところ、いつかは既存のプラットフォームだけでなく、個人のインフルエンサーやクリエイターにも利用してもらい、プレイリストをおすすめしてもらうようなことができないかと思案しているとか。そうなると、テレビというメディアに飛躍的な革命が起きるかもしれませんね。

ところで、「FAST」がどんなものかについては、専門のセッションがありました。すでにアーカイブ配信されているので、関心のある方はそちらをご覧になるといいかと思います。

今の時代にコンテンツを確実に届けるための「平要快熱」のアプローチ

阿久津さんの話を聞いて、「そういう話でよかった」と胸をなでおろしていたのが、博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所の上席研究員、森永真弓さんです。

森永真弓さん

「ローカル局が集まって日本版FASTを作ろうとしているのかと警戒していた。というのも、普通の人はスマホで立ち上げるのアプリは1日に2つか3つぐらい。普段使っている動画サイトをはじいて、新たなFASTを作ってやろうとしたって無理。大警戒していたが、LCBの話を聞いたら違うじゃんと、超いいよねと。YouTubeでもどのプラットフォームでも見られるわけだから。地方のテレビのコンテンツが事前に検索して見られるものがあったら、私の出張生活はもっと充実したのに(笑)」 

ここから先は会員限定です。メディアが「ユーザーに直接、コンテンツをすすめるアプローチではダメ」な理由と、今の時代のユーザーにどうしたら届け切ることができるのかという具体的な手法について説いています。

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