災害前線報道ハンドブック【第2章】避難フェイズ②避難所で何をどう取材するか
スローニュース 熊田安伸
今回も避難所での取材についてです。大災害であればあるほど、思わぬところが避難所になることは前回、説明しましたが、そこでどんな取材をどのように進めたのか。実例をもとに紹介します。
「原発」そのものが避難所になっていた!
東日本大震災で最も「想定外」で驚くべき避難所のケースがありました。それが「原発」です。
中心市街地が津波で壊滅的な被害を受けた宮城県女川町。その高台には、東北電力の女川原子力発電所があります。津波から逃れて高台に向かった住民約360人が、その中で最長80日間に及ぶ避難生活を送ることになりました。
避難者の第一号は、なんと出産間近の妊婦。重い体で高台に避難していた時に、たまたま東北電力の車と遭遇し、原発に身を寄せることになりました。これが、避難者を受け入れるきっかけとなったのです。
前例のない“原発への避難”、そのこと自体は小さく報道されていたいたものの、80日間の詳細は全く知られていませんでした。