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「桃の路上販売は盗品?」「ホタテパウダーは農薬を除去?」…農業まわりを徹底的に調査報道「のうとく」に注目

あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。

きょうのおすすめはこちら。

路上販売の桃どこから(上)カード下で「7個300円」

SNSでちょっと話題になっている「駅前で桃を売るトラック」。あれは「盗品ではないか」などという風聞も流れていますが、果たして実態はどうなのか。記者が販売業者と山梨県内の産地を回り、直接取材。果たして見えてきたのは……。

この記事、日本で唯一の日刊の農業専門紙である「日本農業新聞」が「農家の特報班」として配信しているものです。

「農家の特報班」とは、LINEでつながった読者の質問や情報をもとに、記者が徹底取材をするという取り組み。読者の目線に近い、農業分野の調査報道を実現しようということですね。

中にはこんな報道も。

農薬を除去?「ホタテパウダー」怪しい効果

ホタテの貝殻に由来する粉を水に溶かして野菜や果物を洗うと、残留農薬が除去できるとうたった商品がネットで販売されています。本当に効果があるのか、そんな疑問の声から、記者が専門家とともに実験をしてみたものです。

最終的な検証結果としては、なんと「水道水と変わらない」という結論が出されていました。生活者目線に立った報道ですよね。

実はこの取り組み、ジャーナリストやメディア関係者が集まる「報道実務家フォーラム」で、日本農業新聞の方に教えていただいたものです。特に読まれた記事としてはこちらのような例があるとか。

シャインマスカット、花咲かぬ怪 15県で確認 減収でも原因不明

ぶどうの高級品種、シャインマスカットの開花異常を訴える農家が全国で相次いでいるというもの。主要な産地である23の道府県のうち、15県で発生が確認されたといいます。

原因は不明だとのことで、農家には不安が広がっています。

記事は大きな反響を呼び、読者からLINEで原因や対策に関する情報が次々と寄せられたということです。まさにエンゲージド・ジャーナリズムですね。

実はこの「のうとく」にはお手本があって、それが西日本新聞が始めた「あな特」こと「あなたの特命取材班」。やはりLINEなどで読者から情報を集め、調査報道を行う取り組みです。

こちらもこれまでに大スクープにつながる情報が寄せられたり、ちょっとした読者アンケートがすぐにできたりと、成果を上げているとか。

メディアの手法が共有され、使われていくことで、ジャーナリズム全体の底上げにつながる。そんな事例であり、改めて大切なことだと感じました。(熊)

(日本農業新聞 2023/9/8ほか)