能登半島地震のニュースは読者に届いていたのか、求められていた情報は何だったのか、徹底分析してみると……
あふれるニュースや情報の中から、ゆっくりと思考を深めるヒントがほしい。そんな方のため、スローニュースの瀬尾傑と熊田安伸が、選りすぐりの調査報道や、深く取材したコンテンツをおすすめしています。
きょうのおすすめはこちら。
被災地で求められる情報とは? ——能登半島地震から1ヶ月、東京との読まれ方の違いを分析
考えてみれば当たり前ではあるのですが、実際に突き付けられると、やはりそこまで考えていなかったという驚きのデータ分析を目にしました。特にメディア関係者は必読ではないでしょうか。
スマートニュースのデータアナリストである有野寛一さんが、能登半島地震が発生した1月1日からの1カ月間、スマートニュース上で配信された記事へのアクセスを徹底分析しました。対象となった記事は、地震に関するキーワードが含まれた約1万本。その結果を「Media x Tech」ブログで発表しています。
まずはアプリの起動数を調べたところ、石川県でも東京でも地震が発生した16時台に急増し、グラフに「角」が立っているのが分かります。プッシュ通知でユーザーに知らせた影響だとみられています。そして東京では緩やかに減っていくのに、石川県ではその後も小さな「角」が続きます。余震のせいでしょうか。
そこまでは想定どおりだったのですが、「なるほど、そりゃそうですよね」と唸ったのが、次の分析。PV(ニュースの閲覧数)の推移を分析してみると、東京では同じように16時台に「角」が立っているのですが、石川県ではむしろ、15時台よりも16時台以降の方がPVが減っているのです。そして東京では起動数と同じように減っていくのですが、石川県ではむしろ夜になってにPVは上がっています。
なぜこうなるのか、お気づきの方もいるのではないでしょうか。そうです、発災直後の被災地では、スマホさえ見ている余裕はないのです。19時以降、アクセスが急増していくのは、避難場所や避難所などに落ち着き、身を守ることができた後、情報を求めていると見られます。
「発災当初はテレビなんて見る余裕がないので、デジタルでも発信しなくては」そんなことがテレビ局内では語られていますが、それさえも再考を求められる結果です。(自戒を込めて)
発災当初の情報提供の方法としては、防災行政無線という手段もありますが、「よく聞こえなかった」というケースは後を絶ちません。となると、もはやARゴーグルで安全な場所や情報を示すか、パーソナライズしたAI音声通知でもするしかないのでしょうか。結局は、情報よりなにより、事前の準備をもとにまずは「津波てんでんこ」で避難するのが一番かもしれません。
そして、いったん避難場所などに落ち着いた被災者に、まずどんな情報を提供すべきなのかも、よくよく考えなければならないということも、この分析は示しています。発災から2~3時間経過したら、それを意識した情報提供をしなければならないということです。
さらに今回の分析では、「被災状況」「ライフライン」「支援活動」の3種類でキーワードを分析した結果も出ています。被災者にどんなニーズがあったのか。特にライフラインでは、石川県と東京で閲覧結果に差がでていました。詳しくは記事の方をご覧ください。(冒頭のサムネイルがその結果です)
読者が記事をどう読み、何を求めているかを知ることはメディアにとって重要ですね。ちなみに有野さんは、以前、こんな分析記事も出しています。
ご参考に。(熊)