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会社は清水工場周辺の魚の高濃度汚染も把握していた!【スクープ連載『デュポン・ファイル』第3回】

国際機関から発がん性を指摘されている有機フッ素化合物、総称「PFAS(ピーファス)」。三井・デュポンフロロケミカルの清水工場(静岡市)で半世紀以上にわたって使われ、工場の内外を汚染していた。その工場内の極秘データが収められた「デュポン・ファイル」を入手。5万ファイルに及ぶ膨大な資料を紐解きながら、「地下水汚染」「排水汚染」「大気汚染」「体内汚染(従業員)」の実態を4週にわたって描く調査報道シリーズの連載第3回。

地下水の汚染源は、果たしてどこなのか。前回は、きわめて濃度の高い井戸を示した資料を明らかにするとともに、その近くにあった穴にPFASの加工品の失敗作が「捨てられていたのではないか」という元従業員の証言を紹介した。証言をもとに「デュポン・ファイル」をたどると、1993年の文書を発見。そこに書かれていた驚愕の事実とは。

フリーランス 諸永裕司


「ゴミ捨て場」と書かれたファイルはないか

「PFOA(PFASの一種)を含んだ不良品が捨てられていたのではないか」

元従業員の話が本当なら、それが汚染源になりうる。数十年前のこととはいえ、穴に廃棄していたとすれば、十分な管理ができていなかったことになる。

話を聞いているうちに、私は膨大なファイルの中に「ゴミ捨て場」というようなことが書かれた資料があったことを思い出した。おぼろげな記憶をたどりながら、再び「デュポン・ファイル」の中を探していく。

検索窓に「C-8」と入力すると、関連ファイルがずらっと並んだ。ほどなくして、「C-8の分析方法」というフォルダが見つかった。C-8とは清水工場で使われる、PFOAの符牒だ。

記憶通りなら、テキストを画像データで保存したファイルのアイコンが並んでいるはずだ。開いてみると、確かに見覚えがある。小さく息を吐いて、そのひとつにカーソルを合わせた。

出てきた文書には、輪郭が滲んだような文字ばかりが並んでいた。字体からするとワープロで印刷したものか。右上に1981年の日付がある。C-8の毒性を知らずに増産を続けていたころのものだろう。

ファイルを順に開けていくが、「ゴミ捨て場」の文字はなかなか見当たらない。

6つめのファイルを開いた。

1994年6月7日付。これもワープロで作成されたもののようだ。「技術課」とある脇に、職員の名前が記されている。本文に目を移すと、「1. 作業者の安全」に続き、「2. 環境問題に関わるモニタリング」と書かれていた。

(画像の一部を加工してあります)

「(1)地下水」「(2)一般総合排水」「(3)土壌」「(4)魚」の4項目が並び、それぞれに含まれるC-8を測定していたことがうかがえる。地下水の調査地点としては2カ所が挙げられている。

かっこで括られた「旧1FRプラント前」の文字列に目を引かれた。

前回触れたように、このプラントの西側にある井戸では、きわめて高い濃度が確認され、従業員たちは汚染源を探っていた。それからさかのぼる10年ほど前に、旧1FRプラント周辺はすでにPFOAを測定する地点に選ばれていたのだ。

旧1FRプラントは「Old Filled Resin」と表記されているもの

ということは、1990年代前半よりも前から汚染が確認されていた可能性もある。当時の濃度はどれくらいだったのか。肝心の数値は記されていない。

見つけた!「廃ポリ等の捨て場」だったと示す文書

ほかに手がかりはないか。

フォルダ内に最後に残ったファイル。12番目に開けたのは「含有C-8量の調査」という文書だった。

やはりA4版1枚のメモで、日付は93年10月29日。前のファイルより古いものになる。ただ、「(1)土壌」と「(2)魚」の2項目しか記されていない、シンプルなものだ。

目を奪われたのは「(1)土壌」の後に書かれた文字だった。

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